和食
 
 

いすず(鮮魚料理)
場所:萩市大字今古萩町8(商店街から北へ50m程度、野山獄近く)
電話:0838−22−5196
時間:11時−14時、17時−22時、定休日:なし
お店HP
ウニ丼定食  3,650円
(ヒラマサ、イカ、タコなど刺身が盛られた海鮮丼とウニ板が一枚
小鉢2品(もずく酢・タコの煮物)、汁(魚のあらで出汁をとったみそ汁))

口の中でとろけ、自然と広がっていく優しい甘みを味わえる本物のウニに出会う機会はなかなかないが、ここはその品質を保証できる店として紹介。

粒が立ち、それでいて固さなどなく、一瞬でとろける。苦味など全くなく、ウニがとけた後も、ただただ甘みが残る。これこそが、日本一と確信する萩・北浦の紫ウニの味わい。ミョウバンで保存された見た目ばかりがきれいなウニが並ぶ、都会(どころか捕獲地以外)では決して味わえない味。ただ身振りの大きい北海のウニとも違う、この繊細な味わいをぜひ一度試してほしいと思うところ。

さて、いすず。ただ、この店は、なかなか値段が高い。丼にたっぷり乗った刺身がその要因とも思え、できるならウニ単体で食べさせてほしいが、仕方がない。見島に渡れば、旅館で同等以上の生うにをかなり手頃に食べさせてくれるのだが、萩市内でこれを食べられると思えば、大切にしたいお店。

ウニとは何なのか。その概念が覆されるこの店を、一度訪ねておきたい。
 
                                                      

 

口福の馳走屋 梅乃葉(イカ料理)
場所:山口県萩市須佐5010−1
電話:08387−6−2354
時間:11時〜15時、休日:毎月5日、その他の週の水曜日
お店HP
活イカ定食 2300円
まかない丼 1200円
うに丼(平日限定) 1980円
赤ウニ(1貝) 630円


山口県の最北端に位置する萩市須佐。萩市中心部から、海岸沿いを走る国道191号を東に40分、島根県との県境に位置する小さな町。ここ萩市須佐のグルメと言えば、獲れたての「剣先イカ」。イカの中でも最高級に位置付けられる剣先イカの漁場は、日本海山陰から九州玄界灘周辺となり、山口県の水揚量は佐賀県に次ぐ全国2位を誇る。

すっかり全国知名度を得た佐賀県呼子へのイカ供給基地に甘んじていた山口県も、自らのブランド化に動き出し、4時間かけて呼子まで山口県のイカを食べに行くという無駄を一掃。より鮮度のいい、おいしいイカを、地元で食べられる仕組みを確立する。日本海有数の剣先イカ漁港という恵まれた環境に加え、須佐で獲れた剣先イカの中でも、活きたものだけを「須佐男命いか(すさみこといか)」に認定することで、ブランド化に成功。確実に最高級のイカに当たる安心感が、男命いかへの指名買い後押しする。

着実に浸透しつつある男命いかブランドから、県内で食べられる店も、山口市の居酒屋「土火土火(どかどか)」や防府市の居酒屋「いか鮮本家」等々、確実に増えつつあるけど、やはり獲れたて、新鮮なイカは、現地に行かねばと、山口市から1時間30分のドライブ、須佐へと出向く。

店は、山陰線須佐駅のすぐ隣にあるレストラン「梅乃葉」。値段はいいけど、おいしい男命いかを食べさせてくれるとの噂を聞きつけ、ここを選択。週末の予約不可ながら、事前に連絡すればイカの取り置きは可能とのことで、出発前に電話で連絡。この地まで足を運びながらイカが売り切れでは、とてもその挫折感に耐えられそうにないから。

うに丼(1980円)、須佐の漁師のまかない丼(1200円)と魅力的なメニューが並ぶ中、須佐男命いかの「活イカ定食」(2300円)を迷わず選択、6月から旬を迎える「赤ウニ」(630円)を単品で追加。

新鮮なイカのみが持つ透明度の高さに加え、その身の厚さ、柔らかさ、そして口の中で広がる甘みは、ちょっとレベルが違う。コリッとした新鮮さを感じさせる最初の歯ごたえの後に、柔らかな身の食感が訪れるのは、その肉厚さがゆえ。まさに選ばれし、ブランドを冠する漁師の気概が伝わってくる。足と頭は天婦羅にしてくれ、違ったアクセントを楽しめる。ただ、これを(最初に聞かれるため)注文時に頼むと、足と頭が付いてこない寂しい状態の刺身が出てくるから、一通り刺身を楽しんでから天婦羅をお願いし、揚げたてを楽しみたい。

このレベルの剣先イカが、2300円で食べられることに驚き。そもそも剣先イカ自体、一杯1500円以上軽くするものなのに、活きたブランドイカに調理まで加えてこの値段とは、ちょっと考えられない。これは足を運ぶ価値が十分にあると、イカのおいしさをあらためて教えられながら、ただただ感心する。

さて、せっかくここまで足を運び、シーズンが合うなら、ぜひウニは食べておきたい。全国津々浦々、見栄えのいいウニや名の知れたブランドウニはあまたあろうが、北浦(山陰)の「赤ウニ」に勝るものはなし。口の中で広がる繊細な甘みは、至福の瞬間。これだけは、東京のどんな高級店でも味わえない、現地を訪れた者だけに許される贅沢。

おいしい(食べたいと思う)ウニの最低条件は、市場に出すための添加物ミョウバンを使わないことにあるが、ここは、木の板にさえ乗せない、殻付のウニが1個そのまま出てくるこだわりよう。殻付にありがちな少ない中身など心配無用で、スプーンからあふれる大きな身が6つ、この店への信頼感を寄せるところ。

鮮度だけで勝負する一般人が入りづらい職人気質の店、イメージだけで魚料理そのものの中身の薄い店とどちらかに偏りがちな日本海側に、最高の素材を活かす、良心的な値段と利用しやすいアットホームな雰囲気で迎える店があることを知る。山口を訪れた友人へのもてなしから、両親を含めたたまの家族サービスまで、わざわざ出かけるに値する店として、おすすめしたい。

 
                                                      

 

つばきの館(和食)
場所:萩市越ヶ浜虎ヶ崎(笠山、つばき群生林の隣)
電話:0838−26−6446
時間:9時−17時、定休日:年末年始
刺身定食  1500円

笠山の裏手に位置し、山腹へ上る道の終点に位置する。笠山とは、標高112mの活火山で、世界最小の火山に当たるとか。約1万年前の噴火により生まれた山で、山全体が冷えて固まった溶岩で形成。特に海岸には、波に浸食された溶岩質の黒々とした奇形岩が連なり、見応えのある景色となっている。

さて、つばきの館について。和食の料理屋で、漁協の奥様方がやられているだけあり、なにより新鮮で手頃価格の料理を食べることができる。笠山という市街から少し離れたとこにあるけど、萩に来ておいしい魚をというなら、まずここがおすすめ。

刺身定食は、はまち・いか・さざえの刺身、なまこの酢の物、ひじき、サラダと小鉢が付く。汁は、魚のアラを使ったもの。ご飯はサザエ炊き込みご飯。他には、煮魚の定食、いか刺しや魚煮付け等単品もいろいろあるから、気軽に何度と通える店といえる。
 
                                                       

 

いそ萬(和食)
場所:萩市椿東越ヶ浜明神池前
電話:0838−26−6420
時間:11時30分〜16時、不定休
明神池定食(夕なぎ) 1900円
磯定食(松) 1500円
生うに丼 2500円
萩魚お刺身定食 1400円

手頃にボリュームのある魚料理を味わいたいなら、ここいそ萬。萩市の観光名所・明神池前にあり、昼時に訪ねて満席なら、池の魚に餌をあげながら時間を過ごすことも可能。

明神池定食(夕なぎ)は、はまち、いさき、イカ、エビ等6種の刺身の盛り合わせをメインに、イカを主体とした天ぷら、サザエの壷焼き、すまし汁、煮物、茶碗蒸しが付き、ご飯がウニご飯という贅沢なセット。サザエの壷焼きを外せば1700円の嫁なぎ定食となり、萩の魚を満喫できる手頃な店として、昼時に家族連れを中心に多くの観光客が訪れる理由が分かる。

刺身もおいしいし、いろいろな料理を味わえるが、これぞ萩の魚料理といった満足感を味わえないのは、やはりここが手頃なボリューム感に重きを置き、質を追求する店でないがゆえか。落ち着いた雰囲気で、本物の萩の魚料理を味わいたいなら、別の店を選択したい。ただ、池を眺めながら、広い座敷でくつろいで過ごすのも悪くなく、家族でゆっくり萩観光のついでにというなら、ここは上質な選択肢となるのだろう。
 
                                                       

 
洋食
                                                 
 

RESTAURANT 細川(フランス料理)
場所:萩市堀内211−5
電話:0838−22−6606
時間:11時30分−14時、17時30分−21時
平日昼コース
Aコース(オードブル、スープ、魚又は肉料理、デザート) 2100円
Bコース 3675円
Cコース 5250円
土日祝の昼、夜コース
Aコース 3000円
Bコース 4500円
Cコース 6000円

萩城跡のすぐ近く、武家屋敷が残る堀内地区にあたり、高級旅館・北門屋敷の向かいにあるフレンチレストラン。どこまでも続く白壁の小道に、静かな時間が流れる厳かな雰囲気、そんな非日常的な心地いい空間に包まれたエリアにひっそりとたたずむ白亜の建物。

重要伝統的建造物保存地区のため道路沿いに看板がなく、初めて行くと少々分かりにくい。店横には4、5台置ける駐車スペースがあるから、ゆっくり車を走らせ店を探しながら行くといいだろう。

店内は、白を基調とした上品な造りで、入口側のホールにテーブルが3つ、大理石の柱がある奥のスペースには、大人数向けに6人がけテーブルが2つ用意されている。少人数、グループと、それぞれ用途に応じた利用ができるのがいい。

平日ランチは2100円から。今日のAコースは魚になるということで、どうやら魚と肉を注文時に選ぶというわけではなさそう。日本海の新鮮魚介を売りにした店だから、どのみち魚料理を選択していただろうけど。

まずは、オードブルとして、ボリュームたっぷりの魚介サラダ。たっぷり野菜の山に埋もれる厚みのあるマグロ、サーモン、茹でエビからは、魚介自体の旨みを楽しめ、そこにかかる存在感十分のオリエンタルドレッシング(玉葱やニンニクをすりおろしたドレッシング)が、さらにおいしさを引き立てる。新鮮魚介を活かした料理はさすが、一品目のオードブルで十分満足しながら、次の料理へ。

南瓜のスープをはさみ、メインはフリッターを中心とした魚料理。脂の乗ったサーモンとホタテのソテー、イトヨリのピカタ、マトウダイとエビのフリッターがお皿に盛られ、ソースで見事にまとめられた一品。それぞれの魚介のおいしさはもとより、ソースがおいしい。全体を覆う、魚のだしをベースにした白色のバングランソースと、濃厚な味わいのエビを砕いて作った赤色のアメリカンソース。個性の強い2種のソースが、魚たちの新たな味わいを引き出し、そのおいしさを楽しむ。

デザートもなかなかのボリューム。滑らかな自家製プリンが、最後に満足度を大きく上げてくれる。

2千円ランチとしては、期待以上の料理で、十分に満足。繊細な味わいというより、フレンチらしいざっくりとしたおいしさを感じさせ、ちょっとした驚きもあったりするから、町中フレンチとしては、なかなかレベルが高い。一方、5千円を超えるディナーとなったとき、どこまで幅を広げた料理が出るのか、期待と不安が入り混じりながら、興味深いところでもある。

料理に満足しながらも、いろいろ不満もあり、正直、大事な場面での利用にはおすすめできない。まず、内装。ところどころ剥がれたモルタル壁は、雰囲気を壊すどころか、不快にさえさせる。少なくとも、5千円を超えるフランス料理を味わう場面に必要とされる空間にふさわしくない。店の姿勢として、料理以前の問題と捉える人は少なくないだろう。サービスも、もう一つ。せっかく、おもしろい料理が出てきても、その説明が一切ないと、消化不良で終わってしまう。一度説明をお願いすれば、次からは先に教えてもらえそうなものだけど、それもない。結局、各料理全てこちらから聞くことに。

そんな不満も、いろいろサービスレベルの高い店と比較してしまうからなのかな。日本海に面する萩市にとっては、このレベルのフランス料理の店は、かなり貴重。城下町の厳かな雰囲気の下でおいしい料理をいただけること自体に、まずは感謝。萩でちょっと上質な時間を過ごしたいなら、迷わずおすすめ。ただただ、通い慣れた評判の店と比較しすぎないことだけに気をつけながら。

 
                                                       

 

欧風家庭料理 パウゼ(洋食)
場所:萩市浜崎町14−1
電話:0838−26−3778
時間:11時30分−15時、18時−23時、定休日:日曜、月曜
ランチメニュー
パウゼランチ(スープ、サラダ、パン、メインディッシュ、パエリアorパスタ、ドリンク) 1150円
ラムランチ(スープ、サラダ、パン、ラムチョップポワーフル、パエリアorパスタ、デザート、ドリンク) 2150円
ラザニアセット(スープ、サラダ、パン、ラザニア、ドリンク) 1250円

昔ながらの町並みが残り、狭い路地を抜けた先にあるこの店までたどり着くのは、なかなか難しい。広く見れば、萩グランドホテル近く、近くで言えば、ご飯のお供・しそわかめで有名な萩・井上商店の本店向かいとなる。

駐車場は、ログハウス調の店舗1階部分に3台、店向かいの空き地にもしっかり確保されているから、安心して車で来店可。木造りの店内には、4人掛けテーブル席が5つと、4つのカウンター席。週末利用でも十分席に余裕があったが、わざわざここを目指してくるなら、席を予約しておく方が無難だろう。

アラカルトもあるが、ランチのお得感がかなり大きい。パウゼランチは、1150円という値段ながら、本日のメインとしてローストビーフに、ミニサイズのパエリア(プラス100円で大盛可)が付いてくるのだから。

そもそも、この店を知ったきっかけは、とある方に椿油が食べられる店と教えてもらったから。椿油とは、今や新たな萩ブランドに育とうかとしている売出し中の新製品。旧萩市の東方にある日本最小の火山・笠山に自生する椿群生林は有名で、見頃を迎える2〜3月には赤色に染まる椿の絨毯を見ようと、多くの人が訪れる。そんな椿に縁のある萩市に立地する精密機械加工を主力とする中小企業・潟Tン精機が作り出したのが、自社の独自技術をつぎ込んだ搾油機。強い圧力をかける昔ながらの手法を機械で実現することで、植物の種子から、熱処理を加えない、高純度の油を効率的に抽出することに成功。

自社の搾油機により製造した椿油は、萩市産椿を萩椿オイル(45g、3675円)、国内産椿を椿の真実(45g、2625円)として、萩市内の様々なお店やネットで販売。椿油は、資生堂シャンプー「TUBAKI」により脚光を浴びたが、髪油やスキンケアの化粧品として日本古来から使われてきたもの。一方、食用としては、酸化しにくいオレイン酸を多く含むことから、健康食品としての一面も持ち、当椿オイルは、食用、化粧用と様々に利用できるものとなっている。※食用の表記は、薬事法の絡みだとかなんだとか

町おこしの要素も兼ねて広まりつつある椿オイルは、萩市内の数店のレストランで使われており、その一つがここパウゼというわけ。いったいどの料理に椿油がと興味津々に聞いてみると、今日は未使用。そこで、パンのおともに、そしてサラダのドレッシングにと椿オイルの小皿を付けてもらい、少しクセのある味わいが椿油の特徴かなとその食味を楽しむ。ただこの油は、お肉のソテーや天婦羅の揚げ油として素材を活かすものだから、直接の味わいからその優位性を見出すのは難しいけど

ローストビーフ、パエリアまでしっかりといただき、食後にゆったりとコーヒーでくつろぐ。ちょっと期待が大き過ぎたところもあるが、この店は夫婦で経営される、家庭的な洋食のお店ということを思い起こせば、何も言うことはない。個人的にはパエリアへのこだわりから、もっとブイヨンを多めに、しっかりと出汁を取り、そこに海老を入れると複雑な味わいを出せるのにと思うところはあるが、萩の店でパエリアに出会えること自体、これまでは考えられないことだから。

過度な西欧料理としての期待は禁物(それを求めるなら、萩のフレンチ・細川へ)。温かな居心地のいい雰囲気と、萩市ではなかなか味わえない洋食を楽しむ店として、その手頃なセットとともに、ランチの選択肢の一つには十分入ってくる(単品から値も張るが、クスクスがメニューにあるのには驚く。※最後の写真)。着飾る必要もなく、子連れでも気軽に入れるほっと休まる店として、友人や家族を誘って訪ねたい。

さて、椿オイルを使うもう一店、イタリア料理をメインとするバル「アッカ(AKKA Bar e trattoria)」には、いったいいつたどり着くことだろうか。
(2012年3月訪問)

 
                                                       

 
                                                       

 

ふじたや(蕎麦)
場所:萩市熊谷町59
電話:0838−22−1086
時間:11時−18時、定休日:水曜
天せいろそば 1200円
せいろそば 700円
そば寿司 600円
かけうどん 350円

商店街アーケードの西はずれから北へ2,300m。街中を少し外れた住宅街にひっそりとたたずむ蕎麦の名所「ふじたや」。街中にお寺の点在する萩ならではの小道を歩くたどり着くまでの道のりも、ちょっとした楽しみの一つ。そして、ここ「ふじたや」は、創業60年以上という老舗の蕎麦屋で、5段重ねのせいろそばに特徴がある店。

萩のふじたやと言えば、そばの名店として名の響く店。訪ねること数度、場所を発見できなかったり、店休日だったりとなかなか訪ねることができなかったものの、数年越しでようやく訪問。せっかくだからと、天せいろそばとそば寿司の注文、さて、どんなそばやらと注文を待つ。そして、出てきたのは、せいろに入れられた5段重ねのそば。

江戸末期に始まったそばを細切りで食べる文化。茹でたてをお客に出すケースは少なく、一度茹でたそばをせいろで温め直して出していたという。せいろで出てきたこのそばは、その昔ながらの方法をとっているというもの。湯気を立てながら出てくる温かなそばは、そば自体のおいしさと、もっちりとした食感が新鮮で、せいろ蒸しのおもしろさを思う。また、黄身の入った温かなつけ汁も、黄身を混ぜることでまろやかな味わいとなり、独特の味わいが楽しめる。

5段というせいろは、量としては調度よく、注文次第で7段なりできるようだが、おいしく味わえる量を思うとメニュー通りでいくべきだろう。量を求めるなら、少し嗜好を変えてそば寿司なんてのもいい。同じそばながら、巻かれたアナゴやさっぱりとしたつけ汁が、また違う味わいを見せてくれる。

店内は、こじんまりとした仕様。4人がけテーブル席が3つ、座敷に同じく4人がけテーブルが2つと、最大15人、5組が同時利用できる環境。昼時を過ぎても席が埋まっていることは多く、店内で空きを待ったり、店内を覗いて諦めて帰るといった客を何組も目にする。本気で食べる気なら、それなりの覚悟を持って、時間に余裕を持って訪ねるのがいいだろう。

決してきれいな店でもないし、特に心地いいサービスが味わえるわけでもない。普通の昔ながらの田舎の蕎麦屋である。それでも、そこで味わえるそばは、やはりここならではのオリジナルのものだから、きっとまたここを目指して訪ねることになるだろう。そばのコシやつけ汁にこだわり洗練された味に仕上げたタイプの店にはない、どこか懐かしいそばという食文化の原点を感じさせる。そこに、この店の価値がある。
 
                                                       

 

網焼きレストラン 見蘭 (ミドリヤファーム)(焼肉)
場所:萩市堀内89
電話:0838−26−0141
時間:17時−22時、定休日:月曜(祝祭日振り替え)
お店HP

全国的にも有名になった見蘭牛(けんらんぎゅう)を味わえるお店。和牛の原型といわれる天然記念物「見島牛」をオランダ原産のホルスタインとかけあわせた牛で、県内でも数える程しか食べられる店がないだけに価値もある。

お昼は、10人以上の予約客のみが対象。夜は、食べ放題をしている時期は客が急増するから、念のため予約をして訪ねたい。ちなみに食べ放題には見蘭牛が含まれず、どうせ訪ねるなら、単品で見蘭牛を選びたい。

霜降りカルビは確かにおいしいが、多くの町でA4、A5クラスの質の高い和牛食べられるようになった今、萩市でわざわざ焼肉を食べる価値があるかどうかは、見極めが難しい。見島という斜面に覆われた餌の限られる孤島生きるため、何代もかけ全身に質の高い霜降りの脂をまとった見島牛の体質を受け継ぐ見蘭牛を、一度味わってみてはと思いはするが。

少々サービスに難があるのも、この店の残念なところ。アルバイト主体とはいえ、萩という誇り高き城下町(田舎町)にサービスという概念は定着しないのか。何度か利用しているが、どこか冷たく、あまりいい気持ちでこの店を後にしたことがないことが、少々足を遠ざけてしまう理由でもある。
 
                                                       

 
カフェ
 

晦事(COTOCOTO)(カフェ)
場所:萩市呉服町2−32(菊屋家住宅そば)
電話:0838−26−7199
時間:10時−18時、定休日:不定休
夏みかんのジュース 350円
コーヒー 400円
プチケーキ350円(セット−50円)

萩城下町のど真ん中、菊屋家住宅のすぐそばにあるカフェ。重厚で厳かな雰囲気に包まれている萩にあって、さらに特別な空間を持つのが、ここ城下町。萩城を前にした一帯は、上級藩士や御用達商家の邸宅が連なり、そこには、高杉晋作生誕地、桂小五郎(木戸孝允)旧宅、青木周弼旧宅と、重要文化財にも指定される名だたる人物の旧宅も白壁の細い通り沿いに点在している。

その城下町に200年たたずんだ町家を改装したのが、このお店。その趣は、ただ年数を経ただけでは出せない独特の凛とした雰囲気があり、なんとも心地いい。雑貨屋を併設し、庭を前にした一部屋にテーブルが並ぶ。時間を忘れていつまでも過ごせそうなその心地いい空間を、座り心地のいいドイツやデンマークといった欧州製のソファが後押し。現実を忘れさせるような居空間を作り出せるカフェが山口県にあったんだ、とただただ嬉しくなり。

この店の素晴らしさを店員さんに伝えていると、恐縮しながらメニューの少なさを詫びられる。数ヶ月前に開店したばかりで、メニュー開発はこれからのよう。確かに、造りの質の高さにメニューが追いついていないところはあるが、萩城下町でしか味わえないこの雰囲気を活かしきったその造りだけでも、賞賛に値する。

ここが観光地でないなら、本を片手に2時間でも3時間でも過ごしたい。まだまだ来客が少ない、今こそまだその雰囲気を堪能できる時期とも言え、まずは早めに一度訪ねてみることをおすすめ。そして個人的にも、その素晴らしさを伝えたく、次は一眼レフを連れて近々訪ねようと決意するところで。
 
                                                       

 

俥宿 天十平(くるまやど てんじゅっぺい)(喫茶)
場所:萩市南古萩町33−5(菊屋横丁から更に小道を南へ下った先)
電話:0838−26−6474
時間:9時−18時、定休日:なし
お店HP
ストレートティー(ダージリン) 400円
夏みかんのジュース 350円
紅茶とケーキのセット 800円

明治時代の民家を利用した店で、入口の門からその雰囲気を漂わせる。庭を通り、建物のガラス戸を開けて店内へ。暖かくなれば、庭にあるテーブルを使い外での一服もできそう。

民家の各部屋に、萩焼や洋服が数多く並ぶ雑貨屋を併設。古民家の雰囲気を味わいながら焼物を見て回る趣向も、なかなか楽しめていい。

さて、肝心の喫茶店。実は今回建物のどこにあるか分からず、たどる着けない結果に。民家の扉を勝手に開けるわけにもいかないし、どこかに案内が書いてあるといいんだけど。

その雰囲気から、落ち着いた時間が過ごせそうで、また次回に訪ねてみたいと思うところ。
 
                                                       

 
 
 
 
 
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萩市

山口県北部、江戸期を通じ長州藩の城下町として山口県の政治の中心をなした歴史を持つ町、萩市。
北を日本海に面し、波が荒く、冷たい海で育った身の引き締まった魚介類は、県内でも別格のおいしさを感じさせる。城下町の雰囲気を活かしたカフェや、新鮮な魚介を味わえる店と、萩ならではの店を紹介していきたい。