東南アジアを放浪記 1

出発に向けて


前説

海外で生活する人たちの話を聞き、旅行小説を読み、漠然とした憧れがあった。
日本にはない、東南アジア独特の雰囲気を味わいたかった。
それだけではない。自分とは何かが分からずに、違う世界で自分の存在を確かめたいとも思った。
いろいろな理由はあった。しかし、これだけは確かだった。
刺激がほしかった。それが実現できるのは人間が熱い東南アジアしかないと思った。



動機

旅を現実的に考え始めたのは大学2年の夏。2ヶ月程度、長期の旅を考えた時、時間が取れるのは大学2年の春休み。
元来一人でいるのが好きでマイペース派を自負する自分としては、一人で旅すること以外考えられない。猿岩石の影響
を否定するつもりはない。根本的な動機はそこにあるのだろうから。

夏休みからは、多くの本を読んだ。頭の中で具体像を描きたい性格から、いろいろな情報を集めようとした。そこで出会う
いろいろな人の価値観に触れ、思いは強くなっていった。東南アジアを選んだ理由は、生きることへの熱さがあると思った
から。必死に生きるというか、一生懸命生きるというか、どこかクールに生きている自分の憧れでもあり、そこで自分も熱く
生きたいと思いがあった。

東京で生活し、自分の世界をつくれることの気楽さと、孤独感という寂しさを知った。そして、自分の奥底にある感情が、ま
た違う世界に身を置き、新たな自分を見つけることを欲っしていた。



準備

空想と現実は違う。現実的な準備をする上で出会ったのが、バックパッカーズ読本。バックパッカー。つまり、背中にバック
一つ背負って移動する旅人。この本で、一度も海外へ出たことのない自分でも十分な準備と心構えを持つことができた。こ
ういう本を読んでおけば、心に余裕もできトラブルにも冷静に対処できる。何も知識を持たずに行きついた町を探索する。そ
れが楽しいんだ。夜行列車組はそう言うが、初めての旅行者には無理な相談。
東南アジアと日本の文化の違い。一番分かりやすいのはトイレ事情。つまり、紙を使うか使わないか。世界の7割の国で紙
を使わないといわれるが、常識的に紙を使う人々にとっては、どうしても抵抗のあること。基本は水ですすぎ手で洗う。正直
今の状態で空想したらちょっとひいてしまいそうだが、実際はそうでもない。具体的に話してもしょうがないことだけど、向こう
の食事事情からか、結構水っぽいのだ。
慣れてくれば、取れたか取れてないか分からないような紙より、きれいに洗える手のようがよっぽど清潔に思えてくる。日本
で練習してもちっとも参考にならないだろうし、旅行前の現地での楽しみのひとつとして。ついでに、実践まで不安だし、結構
役立つものだからと、トイレットペーパー1ロール持って行くことに。
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持参品
バックパック   Tシャツ3枚   チノパン   パンツ3枚   タオル3枚   ひも(物干し用)
袋   薬(ルルA錠・ビオフェルミン・虫さされ薬)   洗面具(歯ブラシ・石鹸・シャンプー)
写るんです2個   鍵   トイレットペーパー   貴重品袋   手帳   ガイドブック   長袖シャツ
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現地調達
サンダル   懐中電灯   南京錠   殺虫スプレー   サンオイル   アーミーナイフ
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はっきり言って暑いので、短パンは必要。ただ、なんにしても現地調達のほうが安いし、結構なんでも手に入るので、あんまり神
経質になる必要なし。
石鹸さえあれば洗濯できるし、荷物は少なめに限る。
蚊がたくさんいるんで虫さされ薬は必須。一晩中蚊に襲われ布団にくるまって寝たことがあって、あまりに辛いんで一度殺虫スプ
レーを買ったが、体に悪そうだし、そういう状況に出くわさなかったこともあって、二度と使うことはなかった。ほんとその時は、20
匹近く蚊を殺したのに、起きたら15ヶ所刺されていて、ほんとに参った。

薬は、下手に日本のものは飲まないほうがいい。腹を壊した時に、大抵は一過性のものと思って自然回復を待つんだけど、結構
続いたから薬を飲んだところ、毒素が腸で止まったらしく、ほんとに辛い思いをした。現地の薬局で買うと結構効くらしいけど、説
明書の内容も分からない薬を飲む勇気はなく・・。

鍵は鞄のチャック2つに常につけてた。ナンバーで合わせるやつだから手軽だし、鍵とセットのロープで、宿に泊まって外出する
時など椅子にくくりつけたり、何かと役に立つ。一度本当に役に立ったので、鍵はかけとくべき。

貴重品袋はいろんな意見があると思う。始めあまりに警戒して腰巻用のメッシュ素材のやつを使うつもりだったけど、蒸れるし出し
にくいし、使えたもんじゃない。首から下げるなんって寒い国での話で、Tシャツからは透けて見えるし、話になんない。結局いつも
使ってたのは、ベルトを通して使う財布。後ろの方につけてると、シャツで隠れてほとんど見えないし、実際使うのもカードを出すと
きぐらい。
基本的に使う分の小銭とお札は、裸でポケットに。パスポート・トラベラーズチェック・日本円は、結局バックに入れっぱなし。ポケッ
トにお金っていうのは、襲われてもそれが全財産って感じで最小限の被害ですむみたいだし、下手にお金持ってるってアピールし
なくてもすむからお勧め。

洗濯紐は使わなかったね。乾燥してるから、椅子とかに干しといても寝てる間に乾いてるし、日本でも使い道無いんで、買う必要
なし。

手帳ってのは多分みんな持ってくんじゃないかな。日本じゃ日記なんって書かないのに、向こうじゃテレビ見ないから結構夜の時間
が暇になって、その日の感想や出来事を毎日書いてた。こういうのってその時何考えてたか分かるし、後で見た時の楽しみになるか
ら、つけるべし。

長袖シャツは一枚あった方がいい。たまに贅沢して冷房付き列車にでも乗ると、これがほんとに寒い。冷やすほど贅沢という感覚は、
冷房慣れしてない体には少々厳しく、必ずといっていいほど体調崩してた。結局2月に日本を出ると、成田まで半袖では行けないから
長袖シャツは必要にはなってくるんだけど。

アーミーナイフが役に立つっていうから、シンガポールで買ったんだけど、ちっとも使わず。旅行内容によっては使うんだろうけど、い
つも外食してる限りは必要なし。

初めての旅行者にとって問題となるのがパスポート。これはさっさと取っておくに越したことは無い。発行までに時間がかかるし、場所
も遠い。ビザは必要ない場合がほとんど。ただ、自分で調べておかないと行きたくても行けないような状態になるので、要注意。長期
で行く時は、現地で取るという方法もある。
あと、クレジットカード。いざという時頼りになるし持っていくべき。少し値の張る買い物はこれで済ませていた。保険付きがお勧めで、
無駄な出費を押さえることができる。保険が効くのが入会1ヶ月後の旅行からなので注意が必要。

航空券。これも大きな問題。どこの会社がいいのかも分からず、情報収集にいそしんだ。友達はHISがいいというがどこにあるかが分
からず、あまり違いも感じられなかったことと、こじんまりしたところが親切そうだという理由で家から近くの会社を選択。
結局これは失敗だったと思う。やはりアフターサービスの行き届いた大きい会社に越したことは無い。値段的に違いは無いけど、現地
でのトラブル対処、そして培ってきた経験はいざという時心強いもの。とにかく計画をたてることが嫌い。おおざっぱには決めるけど、後
は気の向くままにって感じ。だからとてもじゃないが、帰りの出発日を決めるフィックスチケットだけは避けたかった。あえばのんびり、
あわねば帰国。そんなつもりでいた。

一応大学の授業開始を考えて長くて二ヶ月。最大限の余裕を持って、60日オープンチケットを買った。会社は、パキスタン航空。安さと
オープンチケットの存在が決め手となる。たまに落ちることがありちょっとスリリングだが、ご飯もおいしくなかなか満喫。ただ、マニラ経
由の所要時間9時間はいただけない。直通なら6,7時間でつくみたい。
とりあえず、自分の旅行のプランをたてた後、旅行会社で話を聞くのが手っ取り早い。




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