プロローグ


旅計画


2008年も、はや10ヶ月が経過。海外旅行はこれで最後と打ち止め宣言をした昨年の方針を少々転換、年末に休暇を数日加え、新婚旅行を名目に、再び海外旅行に出ることを検討し始める。

希望地は、アフリカ・ケニア。ケニアは、これまでも旅行先として検討してきたけど、自由旅行ができないことによる費用の高さが大きな壁となり、敬遠してきたところ。通常の旅行では難しいけど、新婚旅行の名目なら、多少の出費も受け入れられる。この機を逃すと、気力の面からも、アフリカの大地を踏むことがなくなる可能性が高い。まずは広げた旅行地には、ペルー・マチュピチュ、ブラジル・リオデジャネイロ、スペイン・フランス・イタリアの欧州3カ国と、どれもこの機会にという遠距離・高コストの場所が並ぶも、やはり、大陸そのものに興味を抱かせるアフリカの魅力には勝てず。

文明社会の現代にあって、未だ自然そのものの営みが残る場所。人類主体の発想を生まれながらに身に着けてきた自分が、そこで何を感じるのか。そして、人類発祥の地という、自分の究極のルーツに、肉体として受け継いできたDNAは、どう反応するのか。アフリカとは、自分が訪れなければならない土地。そう、何か見えないものに引き寄せられるかのように、日増しにアフリカ・ケニアへの思いを強くしていく。

希望地が固まった頃から、現実的な旅行方法の検討に入る。ケニアの治安面から、これまでの一人旅のような自由旅行は選択肢になく、まずは旅行会社のツアーを検討。しかし、そこに自分の求めるプランを見つけることができず、ネットに載る旅行者ブログの行程を参考に、研究を続ける。そして、そこで知ったのが、希望をもとに、旅行プランの作成とチケット等手配をしてくれるという、旅行企画会社の存在。自分に足りないのは、アフリカの関する生の情報と旅行手配のためのコネクション。自分のアイデアを実現するためのツールが見つかり、俄然旅行が現実味を帯びる。





行程検討


今後、何度もアフリカに行けるわけではない。それに、サファリだけの行程になるなら、旅行会社ツアーと内容の変わらないものになる。自由に旅行を企画できるなら、自分の希望をとことん伝えようと、企画会社と何度もメールにより、プランを練る。今回は、時間に余裕があることも、それを可能にした要因。これまでは、旅行3週間前(ニューヨーク)に、なかには1週間前(タイ)に突然旅を決断し、大急ぎでチケットと宿の確保に動いていたものだから。開かれた観光地とはいえないため、限られたホテル数や飛行機の便数という現状に、年末年始のハイシーズンが加わり、早めの予約を迫られていることが、2ヶ月前から動く原因となり、おかげで十分な検討時間をもてたということになる。もちろん、いきあたりばったりですまされない、二人旅も、その原因の一つなのだが。

当初、今回の旅行の目的としたのは、@アフリカの大自然と、Aそこで生きる野生動物を見ること、そして、B人類が誕生したその地を訪ねるというもの。ここからは、企画会社とのやりとりを主体に、行程の決定過程を追っていく。

まず、利用した旅行企画会社は、マックス・サファリ。あらかじめ旅行会社が内容を決めている「募集型企画旅行」ではなく、客の要望を聞いて旅行内容を企画し、その企画に承認があった場合、企画に従った旅行サービスの手配を引き受ける「受注型企画旅行」を主体としているのが、この会社の特徴。通常の旅行会社との大きな違いは、旅行費用とは別に、一人18,000円の企画手配料がかかることにある。まあ、それも、自分で入手できない情報料と、プロによる企画提案料と思えば、十分な許容範囲内。


(1) 訪問地

(10月初旬)
最初に旅行の目的に対しては、@自然を堪能するなら、ケニア−マサイマラ・アンボセリ、タンザニア−セレンゲティ・ンゴロンゴロがお勧め。A野生動物については、常に動物は移動していて、ケニアのマサイマラに多くの動物がやってくるのは7,8,9月頃。タンザニア側は、2,3月頃に草を求めて草食動物が移動してくるから、肉食動物に会える機会も高まる。B人類誕生の地は、タンザニアのンゴロンゴロからセレンゲティに向かう道中にあるオルドヴァイ渓谷にあり、景色を一望するだけになるが、小さな博物館もある、との回答。タンザニアの欠点は、移動に多くの時間を要すること。ゆっくりとした時間を楽しめるケニアと、人類誕生の地を擁するタンザニアの2つのコースを主体に検討する。


(10月末)
どうせアフリカに行くなら、サファリだけで終わるのはもったいない。一度はこの目で見ておきたかった、人類の遺産・ピラミッドを行程に加えようと決めたのは、検討から1ヶ月が経とうとしていた頃のこと。旅行の期間は、休みや費用面から9日間とし、エジプト・カイロを経由する行程で、検討に入る。そして、出てきた行程は、次のとおり。

1〜3日目 移動(関空−ドバイ−エジプト・カイロ) → 観光(カイロ1.5日) → 移動(カイロ−ナイロビ)
【タンザニア案】
4日目 (朝)ナイロビ到着後、タンザニアへ、 (夕方)ンゴロンゴロ国立公園着※サファリなし 《ンゴロンゴロ泊》
5日目 (午前)クレーターサファリ、 (午後)ンゴロンゴロ発→オルドヴァイ渓谷観光→セレンゲティ国立公園 《セレンゲティ泊》
6日目 (午前・午後)セレンゲティ国立公園 サファリ 《セレンゲティ泊》
7日目 (朝)セレンゲティ国立公園 ミニサファリ、 (午前・午後)セレンゲティ→アルーシャ(空路) 《アルーシャ泊》
8〜9日目 (朝)アルーシャ〜国境〜ナイロビ、 (午後)ナイロビ→ドバイ→関空

【ケニア案】
4日目 (朝)ナイロビ到着後、アンボセリへ(陸路5時間)、 (午後)アンボセリ国立公園 サファリ 《アンボセリ泊》
5日目 (午前)アンボセリ国立公園 サファリ、 (午後)アンボセリ発〜ナイロビ〜マサイマラ国立保護区着(空路) 《マサイマラ泊》
6〜7日目 (午前・午後)マサイマラ国立保護区 サファリ 《マサイマラ泊》
8〜9日目 (午前)マサイマラ国立保護区 → ナイロビ(空路)、 (午後)ナイロビ→ドバイ→関空


(11月初旬)
検討を重ねた結果、ケニア案をベースにすることを決定。その理由は、まずは費用。タンザニアは、宿・交通費が高く、当初見積りで一人60万円超。空路をやめ、宿のランクを落としても50万円を切ることができず、その分移動の負担がかかり過ぎることも、マイナス材料。移動が多く落ち着かないこと、実質3回というサファリ回数、予防接種が義務であること等から、候補から外す。ケニアは、希望の宿を抑えることができ、アンボセリとマサイマラという希望通りの行程にも納得。チケット、宿と既に残数が限られていたことから、この時点で、仮押さえを入れる。

ちなみにエジプトは、ホテルやガイド付き観光の手配を依頼したが、見積額に納得できず、自分手配に変更。チケットさえ手配してもらえれば、後はいつもの自由旅行と変わらないことに気付き、最安の方法を選択。
ホテルは、エジプト考古学博物館に隣接し、カイロ市中心部に位置する「ナイル・ヒルトンホテル」を、ホテルトラベル・ドットコムから予約。ここは、提携ホテルの多さと、値段の安さが特徴で、毎度海外旅行で重宝。ちなみに宿泊代は、二人で27000円なり。
到着後の半日は、ホテル界隈に観光エリアが限られることから自由散策にするも、翌日は、自由散策では希望観光地を全て回れないと判断し、ネットで見つけた旅行代理店のオプションツアーに申し込む。利用したのは、トラベル雑貨。現地オプションツアーの代理店で、クフ王ピラミッド入場、太陽の船博物館、ピラミッドエリア、スフィンクス見学に、ラクダ乗りが付く理想のコースが、半日で一人8500円。ホテル発着の貸切車に、運転手+日本語ガイド付きだから、言うことなく。


(12月初旬)
順調に決まったエジプト・ケニア旅行も、実は一時、中止の危機があったりする。12月頭に検疫所に黄熱病の予防接種に行き、そこで生ワクチンを接種するリスクを知り、医師と面談した末、予防接種を断念。予防接種をしないなら、リスクをとってまで危険地帯に旅行に行くのはどうかと葛藤し、止めることを決断する。自分ひとりならいいが、海外旅行初めての奥さんを巻き込むわけにいかないから。

旅行自体を止めるつもりはないから、そこから急いで代替案の検討に入る。エジプト行きのチケットを活かして、エジプト、モロッコ、スペインを組み合わせたプランの作成を依頼。欧州ならスペインという思いがあり、イスラムと欧州の文化が入り混じるモロッコにも興味があったから、これなら十分魅力があると。

既にキャンセル料が一人6万円弱発生していたが、それでもいいからと検討したが、キャンセル料が変わらない12月5日18時までに結論をだしたらいいからと、冷静に考える時間をもらえた担当者の言葉が、結局ケニア行きを最終決断させた理由となる。それまでメールで十数回とやりとりしていたけど、決断の際には直接電話し、話をする。エミレーツ航空は、黄熱病予防接種を義務付けていないことから、ほとんど予防接種をする人はいない。そのため、特に生ワクチンを嫌う子供や若い女性に人気。そもそも、訪問地のアンボセリ、マサイマラは、標高2000m超の高地のため、黄熱病やマラリアを媒介する蚊がいる可能性は低く、ムパタスタッフの話でも、ムパタができて15年、約6万人の利用客がいるが、黄熱病もマラリアもかかられた方はいないということ。リスクを恐れては、何もできない。生き方の根本に立ち返り、自分にできるベストの対策を取り、それでだめなら仕方がないと、結論。そして、期限最終日に、やはりケニアプランでお願いすると、連絡する。

最後は、リスクより、それを上回る好奇心。そして、ここで腹をくくれないようでは、何をやってもだめだという、自分への叱咤が、決断を促す。なんだかんだと悩んだからこそ、旅行の価値が一層高まったと、確信する。こうして、ケニア案による行程が確定し、旅行の準備に入る。


(2) 宿

自分で希望のロッジを選べるのも、企画旅行のいいところ。景色のいい、快適なロッジタイプを希望し、教えてもらった候補宿をいくつか紹介。ちなみに、国立公園の宿泊施設は、ホテルとは呼ばず、ロッジと呼ぶ。そして、ロッジには、テント式と、山小屋風の2種がある。
【マサイマラ国立保護区】
ムパタ・サファリ・クラブ
日本人がオーナーで、日本語係員が常時駐在。デラックスルームとスイートルームの2タイプからなる。
マラ・セレナ
公園の中央に位置し、高台にあるので、眺めがいい。マラ川にも近いので、ヌーの川渡りの季節(7〜9月)は、利用が多い。また、朝食を川のカバの近くでとることができるオプションもある。マサイの人達の家を模した造りで、日本語を話せるスタッフはいないが、多くの日本人も訪ねたおり、温かく迎えてくれる。
○ガバナーズ・キャンプ
テントタイプ。晴れていると、青空の下にテーブルを出してくれ、すぐそばに川があるため、朝食を取りながらカバを見られることもある。テント内は電気が通っていないので、ランプでの滞在となる。デジカメ等の充電は、レセプションで行うことになる。1日3回のゲームドライブが特徴で、早朝ドライブ→朝食→午前ドライブ→昼食→午後ドライブとなる。
○オロナナ・ロッジ
テント式のロッジだが、ここ数年人気急上昇中。食事の評判も高い。

【アンボセリ国立公園】
○オルトカイ・ロッジ
ロッジにいながらにしてキリマンジャロ山を眺めるのは、ここが一番快適。

【その他】
ションポーレ・ロッジ
ケニアとタンザニアの国境、ションポーレ山の近くにある。ナイロビから3時間程度らしいが、悪路過ぎるということで、チャーター機(一人18万程度)を勧められる。国立公園のように多くの動物に会うことは期待できないが、自然に囲まれた環境には、ケニア一の評価も聞かれ、何度目かのケニアなら、候補にも。


と、有名所を紹介したが、ロッジを検討するなら、DoDo WORLDというサイトがおすすめ。
マサイマラなら、高台からアフリカの大地を一望できるムパタ・サファリ・クラブ、アンボセリなら、キリマンジャロを目の前に見られるオルトカイ・ロッジを強く希望。タンザニアは、長距離移動による移動費が高く、宿での滞在時間も限られるから、低コストを優先。

結局、希望通りに予約ができ、アンボセリは、オルトカイ・ロッジ、マサイマラは、ムパタ・サファリ・クラブの利用となる。ムパタは、差額9000円ということで、値段差以上の価値があるというスイートルームを選択。部屋の広さ、ジャグジー付きから、断然スイートをお勧めしたいところ。また、せっかくなら、いろいろなロッジを楽しみたいと、評判の高いオロナナ・ロッジを1泊加えることを検討するも、オロナナ・ロッジはムパタスイートに44,000円の追加料金がかかることが分かり、断念。テントタイプへの興味、マラ川そばというサバンナ内にある立地、料理の評判の高さから、かなり引かれるも、値段の高さ(1泊9万円超)は許容範囲を大きく超え、宿移動の負担も考慮し、諦めたもので。


(3) 病気対策

ケニア訪問の最大のリスクは、病気。検疫所配布のケニア感染症情報には、食べ物・水から感染(腸チフス、コレラ等8種)、虫が媒介(マラリア、黄熱病、テング熱等6種)、その他疾患(B型肝炎等4種)と、多くの種類が並ぶ。その中でも、蚊が媒介する、黄熱病とマラリア対策に最も力を入れる。食べ物等は、自分で注意できるが、襲ってくる蚊は、防ぎようがないから。

それぞれの対策は、黄熱病は、予防接種があるが、ケニア滞在に、イエローカード(接種証明書)は不要。ワクチン効力は、接種10日後となるので、早めの接種が必要になる。マラリアは、予防接種がなく、メフロキンなる薬服用になる。ただし、服用者の4割に消化器系の異常等副作用が出るとのこと。

そして、黄熱病予防接種のリスクは、生ワクチンであること。これがために、検疫所で医師と面談までしながら、予防接種をせずに帰る。黄熱病感染時の旅行者死亡率50%という数字が、予防接種を促し、かつしないと決めたとき、遂行自体をやめようと考えた理由。それでも旅行を決断したからには、できうる限りの防蚊対策を取ろうと、様々なアイテムを入手する。





旅行準備


ケニア国内線の重量制限一人15kgから、荷物はなるべく少なめに。それでも、朝は10度を下回り、昼に30度を上回るケニアの気候を考慮し、服は数種のパターンを用意。その他、初めての海外旅行の奥さんを考慮した準備も。ここでは、防虫対策等特殊品を紹介。
○ 貴重品
現金(カード利用を想定するも、ATM事情が不明等のため1000米ドルと5万円を用意。分散所持でリスクを軽減しつつ)
保険(通常クレジットカード付属保険で済ますけど、今回は念を入れて)
ケニアビザ(企画会社に取得を依頼。エジプトビザは、到着時に出国エリアで取得)

○ 衛生用品
常備薬(使い慣れた薬がやはり安心)
処方薬(旅行地を話し医者から処方。風邪、嘔吐、下痢、胸やけ、痛み・発熱用を)
アルコール除菌ウエットタオル(エジプトの不衛生さを懸念。旅行当初にお腹を壊すと後がきついと準備)
トイレットペーパー(海外旅行では、何かと便利)
ポカリスエット粉末(体調不良時の水分補給に)

○ 防虫
※高圧ガス品の持込が禁止のため、かなり種類が限られるのが難点
どこでもベープ(腕に付ける小型蚊取。移動中でも、一人分をカバーできる。)
おすだけベープ(1回プッシュで12時間持続。部屋利用を想定)
蚊取り線香(最新世代のベープに全てを託せず、効きに定評がある線香も併用)
ムヒ虫除けスプレー(数少ないポンプ式)
スコーロン(帝人とアース製薬が共同開発した防虫ウエア。朝夕の蚊活動時間のサファリや屋外移動利用を想定した、奥の手)

○ その他
懐中電灯(エジプト・ピラミッド内見学用&ケニア消灯時用に必須)
2Lペットボトルお茶(スーツケースに携帯)





こうして、ようやく準備も完了。いよいよ、アフリカ大陸に向けて、旅立つ。





                                                                         






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ただ生きる、そして十万年後の今がある
08年12月22日−30日  in エジプト&ケニア
もし、これが最後になるのなら、どこの世界を見ておきたいか。海外一人旅卒業宣言から一年、新婚旅行という機会を得、再び海外に出ることを決意し、訪問先を検討する。
必ず訪ねたい、そして今にその価値が大きな地として選んだのは、アフリカ大陸、人類の築いた壮大な遺産・ピラミッドを擁するエジプトと、野生動物が生息するありのままの大自然を擁し、人類誕生地に隣接するケニア。
十万年前の始まりの地で、何かを感じる自分に出会いに、新たな世界へ一歩踏み出す。