08年12月22日−30日  in エジプト&ケニア
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ただ生きる、そして十万年後の今がある 
6日目【12月27日(土)】


マサイマラ国立保護区 初サファリ


予定通り5時に起床。目覚まし代わりにドアノックで起こしてくれるサービスがあるというが、必要時の早起きは問題ない体質なので、頼まず。電気がつくまでの30分間は懐中電灯を頼りに準備を進め、5時45分に部屋を出る。まずは、センター棟にある図書館に行き、モーニングティーで目覚めの一杯。6時前にロッジのサファリカーに乗り込み、サファリドライブへと出かける。

暗闇の中ムパタを出発し、公園ゲート到着までの30分は丘を下る未舗装悪路の道のり。大きく揺られながら坂道を進み、ゲートに近づいた6時30分頃、辺りを赤く染めながら、広がるサバンナの先にある小高い丘から力強くはい上がるアフリカの太陽と対面する。広がる大地と空の狭間で圧倒的な存在感を見せる太陽に引きつけられながら、この地を契機に何万年と人間の遺伝子に刻み込まれ、引き継いできた歴史を思う。





実質6時30分からの2時間、思った以上に時間が短く、あっという間に過ぎる。1回目のサファリドライブは、動物にあまり会えなかったこともあり、そこらにシマウマやヌー、ゾウを見たアンボセリを思うと少々物足りなさも感じる。ただ、草丈の高いサバンナはイメージするアフリカに近く、どこに動物がいるかという探す楽しさも加わり、動き回るだけでも楽しめた要因になったのだけど。

それでは、動物達の紹介を、簡単に。まずはイボイノシシと対面。周りを警戒し、ちょこまかと動き回る子連れイボ一家は、かわいげがあり、ついつい目で追ってしまう。キリンは走って移動しているところに遭遇。片側づつ前後の脚を同時に動かし駆ける様は、脚の長さからくる優雅な雰囲気と共に見ているだけでおもしろい。

ウオーターバックやトピは、あちこちで見かける大型動物。牛ほどの体の大きさがありながら皆引き締まった体つきで、臀部にかけてのたくましさは、捕食動物から逃げ切る脚力を十分に想像させる。

まんまるな体をしたホロホロチョウや頭に黄色の冠をつけたカンムリヅルと色鮮やかな鳥達も、生い茂る草の中にいる小虫をついばみ生活する、サバンナの常連達。

そしてサファリも終わりに近づく頃に、この朝のメインに出会う。無線のやりとりが続き、突然目印もない一つの目的地を目指し、道なき道を車が疾走しだす。「チーターがいた」というその理由の説明に思わず興奮、揺られる車体に体と心が躍りだす。既に何台か集まった車に横付けし、エンジンを切って、静かにチーターの姿を見守る。こじんまりとした体つきに姿勢の低さ、体を覆う斑点模様で、周りの草に溶け込みほとんど視認できないその姿に、この地で生き残ってきた理由を思う。そっと動き出し、草丈の短い車の通り道を横切る際に、全身をしっかりと確認し、優美な姿を目に焼きつける。

チーターを見終えたところで、帰路につく。そして、すっかり周りが温かくなった8時30分にロッジに到着。スタッフに、チーターはここ最近姿を見ることができなかったから、かなり幸運だと聞きながら、最初のサファリを振り返る。


左:ランニングキリンに遭遇。長い足で優雅に駆け抜ける姿に、思わず目を奪われる。
中:ウォーターバックの締まった後姿を。
右:丈の長い草原に入ると、すっかり姿が見えなくなるチーター。丈の長い草地を、肉食動物が縄張りにする理由が分かる。




周りに何もない、この大自然の中にいられることが、なによりも嬉しい。






マサイ村訪問


一度ロッジに戻り、少し休憩した後、8時50分から朝食。朝食は、ジュース(マンゴ・パッション・オレンジ等)、シリアル(コーンフレーク等)、パン(クロワッサン・デニッシュ等)、卵料理(目玉焼き・オムレツ・ゆで卵等)を選び、その他果物とコーヒーが付くというもの。テーブルの先にあるガラス張りの窓からは、夜の暗闇とは違う、光り輝く大自然の景色が広がり、すがすがしい朝を楽しむ。

      
朝食は、まぶしい太陽の光を浴びながら。まずは、フルーツ盛り合わせ、そして、選んだ卵料理が出てくる。



6日目の朝は、なかなかに忙しい。9時30分過ぎに朝食を食べ終え、ロビーでスタッフにシャワーが温水にならないことを報告し、修理を依頼。そこで、明日のバルーンサファリの予約がとれたことを聞き、一安心。ちなみに、その次に予約した人は、ぎりぎり入れなかったよう。まさか、こんなぎりぎりな計画になるとは思っていなかったが、明日しかチャンスがなかったから、運がよかったと。


ロッジで休むまもなく、30分後の10時に、再びロビーに集合。そう、今日は最初のオプション、マサイ村訪問を予定していたから。今朝バルーンサファリに参加した組が、ロッジに帰らず直接マサイ村を訪問するというから、それに便乗。待ち合わせ場所の国立公園ゲートまで車で向かい、しばしバルーンから帰ってくる二人を待つ。

ゲートには、イランドゥというレイヨウ類の大型動物がいついていて、しばしイランドゥと触れ合う。野生動物ながら人間になついているのは、生後まもなく母親をライオンに食べられサバンナに取り残されていたところを保護されたという経緯による。最初に見たのが人間だから、どうやら自分を人間の仲間だと思い込んでいるようで、すっかり人間になつき、野生に帰そうと試みてもなかなかうまくいかないよう。確かに、サバンナの中にはここ以上の安全地帯はないからなと思いつつ、こちらも動物に触ることができる貴重な体験を楽しめ満足したもので。

   
左:サファリカーのランドクルーザー。空いた天窓から身を乗り出し、サファリを楽しむ。
右:保護区ゲートに居つくイランドゥ。しばし時間があったから、車を降りて、スキンシップ。動物に触る機会があるとは・・。



しばし待機後、バルーン会社の車で帰ってきた二人と合流して、ロッジの車でマサイ村へ。訪ねたマサイ村は、丘の中腹に生垣で周りを囲み、一族の4家族が共同で生活しているという村。村の入口に父親と20代の息子二人が出迎えてくれ、生垣の外を歩きながら村の構成や生活を説明してくれる。入口が4つあるのは、それぞれの一家で入口を分けているためや、村の奥に皆が集まる集会所を設け何かの決定等を行う神聖な場所になっているといったことを。

生垣の外には大きな木が2本あり、それぞれに生活に必要な重要な木だと説明を受ける。1つは、腹下しに効果があり、もう一つは、出産後の栄養補助として木の皮をゆがいてスープにして飲むという。どちらも、薬や栄養分が限られるここでの生活では生命に関わる重大な問題で、先人の知恵として受け継がれてきたことが想像できる。また、茎を使って歯ブラシとして使うところは、実演。繊維質の特徴を活かしたスパイシーな歯磨きを体験する。

いろいろ質問をしたりと時間を過ごした後、いよいよ村の中へと案内される。まずは、村の女性達が一列に並び、歓迎の歌でお出迎え。一緒に列に入り、ビーズの首飾りをかけてもらい歌を歌った後、生活する住居に案内される。牛糞を混ぜた土壁でできたこじんまりした家は、見た目どおりに内部も狭い造り。明かりがなく暗い中、寝室や炊事場を見せてもらい、普段の生活の話を聞く。再び外に出てからは、堅い木と柔らかい木の摩擦により火をおこす実演を見て、村の見学を終了する。

見学後は、お土産物売り場への案内。村の外に、それぞれの家族が作ったというビーズや木彫りのお土産が並び、ゆっくりと見て回る。何かいいものがあれば買ってもと思うも、どれもこれまで見てきたお土産と比べ質の劣るものが並び、躊躇。ビーズは、ナイロビで購入し、家で作ったものというが、ビーズ作品の使いようもないなと現実的なところで引っかかり。結局、キーホルダーを2つ購入。ビーズで装飾されたミニサイズのマサイ棒で、これはマサイの要素が入っていていいなと。

帰り際に、村長に持ってきていたボールペンを十数本プレゼント。アフリカでは、値段交渉の手段としてボールペンプレゼントが効果的というが、口八丁の値段交渉を楽しみたいこともあり、当初からボールペンは出会う子供達へのプレゼントにしようともってきたもの。10本100円で購入できる日本ではたいした価値がないけど、それを必要とする場所があるならと。ただ、他に機会がなく、ここでしか渡せなかったのは、ちょっと残念なことだったけど。

近代的な文化が入ってきながらも、未だ伝統的な生活スタイルを守る暮らしを続けるマサイ族。その生活に直接触れることができる機会を得られたことは、貴重な経験。決して日本では知ることができない異文化の日常に触れることこそ、日本を出る価値だなと思いつつ。


左:出迎えてくれた、村長と息子2人。
中:まずは、村の周りを紹介。生垣で囲み、動物の侵入を防ぐ仕組みになっている。
右:村の中に入ると、女性と子供による、歓迎の歌で迎えられる。勧められるまま、間に入って、一緒に歌うことに。




左:村内では、火のおこしかたを見せてもらう。木の摩擦で火種を作り、枯草に燃え移らせて、一気に火を大きくする。
中:マサイ族の家。牛糞と草をねりかためて造っているけど、乾燥しているから、中に入ってもにおいはしない。
右:村の外には、お土産売場があり、村見学後にガイド付きで一周。土ぼこりを被り、長年売れ残ってる様子が、残念。






午後ロングサファリ


12時にロッジに戻り、部屋でしばし休憩。ジャグジーに入り、大自然を前に汗をながし、13時30分から昼食に出向く。昼は、スープと牛肉料理、デザートのミニコース。煮込んだビーフストロガノフ仕立ての料理がおいしく、感心しながら昼食を楽しむ。

      
スープ、メインの牛料理、デザートからなるランチコース。あっさりめの煮込み牛料理がおいしく、しっかりといただく。



昼食を食べ終え、1時間もしないうちに午後のサファリが始まるから、なんとも忙しいスケジュール。すっかり気温は30度を超え、猛暑を実感。少々体に疲れを感じながら、ロビーに向かう。そしてこのとき、出発前に少々お腹の調子が悪かったことが、この後の苦しみへとつながることに。

体を外に出して動物を見るためにサファリカーに設けられた天井部の穴からは、車内に真夏の太陽が降り注ぐ。うだるような暑さに体力を奪われ、徐々に悪くなる体調に拍車をかける。胃の痛みとお腹の調子の悪さに、肉類中心の食事の影響か、それともさっき飲んだ持参のお茶が痛んでいたのかと思いつつ、楽しいサファリが、あっという間に我慢大会へと変わっていく。

お腹の調子が悪いが、周りにトイレは当然なく、途中で車から下りるわけにもいかない。でこぼこ道に跳ねながらのドライブに落ち着くことなく、時間が過ぎるのを待つ。そんな中、ついに出会ったライオンは、イボイノシシを捕まえ食べている最中というまさに野生の生態そのもの。皆が立ち上がり、その姿を写真に収める中、こっちはそれどころじゃないんだよと一人席に座り、窓越しに眺める程度。口の周りを赤く染めながらたまにこちらの様子を伺うライオンに、今ここで外に出てトイレなんざ行くなら、あんな感じで食べられるんだろうなと思ったりしながら。

日が傾き始めた終盤は、だんだん調子が戻ってきて、それなりにサファリを堪能。午後のサファリは、15時から18時30分までの長丁場。その分多くの動物や、変わっていく景色を見ることができる。たまった水たまりの中にいるカバや、イボイノシシを捕食中のチーター、キリンや象の家族に、雄一匹が多くの雌を従えハーレムを作るガゼルの一群、数匹を歩哨に立て周りを警戒させながら、その中でゆっくりと食事を続けるインパラの群れや餌を探しうろついているセグロジャッカルと、広がる大草原の中で数多くの動物と遭遇。そもそも、大自然の景色自体がすばらしく、何にも遮られることなく、どこまでも続く青々と茂った草地に何度もシャッターを押し、満喫する。









ムパタ日暮れ


日が沈み、周りが暗くなった頃にロッジに到着。長い長い戦いを終え、無事の帰還を一人喜ぶ。スタッフに、胃の調子が悪いから、夕食をおかゆにしてほしいと頼み、部屋へ。すぐにベッドで横になり、しばらくの睡眠に入る。

途中目覚めた21時過ぎに部屋まで運んでもらったおかゆを少し口にし、胃薬を飲んでそのまま眠りに。まだまだマサイマラでの時間はある、ここは無理せずゆっくり休む、明日の朝には治るようにと願いつつ。









                                                                                            


7日目【12月18日(日)】


バルーンサファり


早朝4時15分に起床。ロッジにはまだ電気が流れておらず、懐中電灯を使って出発の準備を始める。

ムパタ滞在3日目のメインイベントは、オプションで頼んだバルーンサファリ。一人435ドルと少々値段は張るが、野生の動物と共に今に残る大自然を気球に乗って上から眺める機会は望んでも得られないと、少々のリスクを織り込み選択。普段のサファリより1時間早い、朝5時出発ということから、起きる時間もそのまま早まり。
4時50分にロビーに到着し、紅茶とクッキーで一息。辺りが暗闇に包まれた中、ロッジの車で集合場所へと向かう。

バルーンサファリは、ムパタとは関係のないバルーン会社「ムシアラ」の主催となるため、ムパタの役割は集合場所に案内するまで。到着後、バルーンの注意事項について説明を受け、日本語パンフレットで再確認した後、事故時の責任の所在に関する誓約書にサイン。真っ暗闇の中スポットライトで照らし出された待機場所で、出された紅茶とケーキを食べつつ時間を過ごしていると、他のロッジからの参加者が次々に集まってくる。

皆が揃ったところで、再度バルーンの注意事項を説明。特に事故が起こりうる着地時の姿勢については念入りに説明があり、こちらも頭の中でシミュレーションを繰り返す。点火により徐々に膨らみだしているバルーンは、暗闇の中その周辺だけオレンジ色の炎で浮かび上がり、なかなかきれいなものだとこれから命を預ける乗物をしばし鑑賞する。

   



バルーンに付いた大きなかごに、総勢18人が乗り込んでの飛行。飛び立つ頃にはだんだんと空も赤みを帯び始め、早朝の景色を楽しみながらの出発となる。サバンナの中に広がる森林地帯を見下ろし、続いて朝もやの漂うサバンナを眺める。10度を下回る朝の気温が、日の出と共に一気に上昇していく気候は、明るさの出てきた草原一帯を朝もやで包む神秘的な景色で楽しませてくれる。

昼は、辺りを警戒しながら立って草を食べていた動物達は、朝を迎え、大地にしゃがんで休む姿を見せ、見慣れぬ空飛ぶ物体を興味深そうに眺めていたりと、のんびりとした早朝のサバンナの姿を見せてくれる。

日の出の瞬間は、バルーンサファリのハイライト。東方の小高い丘から徐々にはっきりと見え始めるオレンジ色の輝く光りは、全てを包み込む優しさと力強さがあり、ただただ魅せられ、いつまでも眺め続ける。





バルーンから見るサバンナは、車からとは全く違う景色を見せる。大地をかき分け蛇行するマラ川の迫力、どこまでも広がる大平原、草原付けられた何本も交差する動物の通り道と見応え十分で、その中で生きる動物達の自然な姿もまた見もの。川で休むカバの家族、森林の中を歩く象、川べりを移動するバブーン、バッファローやガゼルの群れと、様々な動物の姿を見る。

遠くにテントを見たところで、いよいよ着陸態勢。十分に教えられた着陸姿勢をとるため、かごに座って体を固定させる。風にあおられかごが引きずられる最悪の事態まで想定した着陸は、ベテランキャプテンの腕の良さで、スムーズに終了。1時間超の飛行を、ただただ楽しみ、無事に終える。








シャンパン・ブレックファースト


バルーン到着後に待っていたのは、シャンパンサービス。バルーンサファリの特徴は、風任せに飛行を続け、出発地から数十キロ離れたサバンナのど真ん中に降り立つことにある。移動の障害となる悪路の影響を受けず、車では難しい遠方にストレスなく行けることは、バルーンの大きなメリット。そして、もう一つの特徴が、到着したサバンナのど真ん中で、シャンパン付きの朝食を食べられること。本来車から下りることも禁止されている野生動物達の居住地サバンナを歩き、同じ目線に立って時間を過ごせることは、なにより貴重な機会だと。

朝露に濡れた草をかき分け、皆が集合している地まで歩いていく。用意されたテーブルに並んだシャンパングラスを手に取り、太陽の光で輝くシャンパンを空に掲げて、皆で乾杯。すっきりとした炭酸の刺激がのどを潤し、朝の一つのイベントを締めくくる。

しばらく終わったばかりのフライトについて語らい、草原の上に用意されたテーブルへと移動。できたてのフレンチトーストやソーセージ、ベーコン、ボイルドエッグをお皿に盛り、シャンパンを飲みつつ食事を進める。コンロを始め準備した調理器具で、シャフによるその場での調理も、この朝食のうり。シンプルながら、できたての料理に十分満足させられる。パイナップルといった果物やチョコレートをかけるできたてのホットケーキと、デザート付きも嬉しいところで。

ゆっくり食事と会話を楽しみ、のんびりと45分ほど過ごしたところで、帰りの時間となる。バルーンサファリの良さは、上空移動で遠方に到着した後、そこからサファリをしながらロッジまで車で連れて帰ってくれることにある。ただの帰り道が、イベントになるのは、国境を越える規模で野生動物の生息する国立公園が存在する、アフリカならではのものだと思いつつ。


左:着地したバルーンは、車に乗せて帰るためにさっそく片付けに。このかごに、15人が乗っての大飛行を楽しむ。
中:シャンパンで乾杯した後、ここで朝食。その場で、調理されたベーコンや卵料理が回される。
右:この大地に立つ機会があることが、なによりのこのサファリの魅力。一動物として、野生の世界を眺める。






バルーン後サファリ


車を走らししばらくして出会ったのが、雌ライオン。土が少し盛り上がった大地に前足を置き、首を伸ばしながら四方を見渡し獲物を物色。高い草丈に身を隠して食事をしている動物を探そうと、熱心に辺りを見回す姿は、狩人である雌ライオンの特徴。雌は昨日見たからなんて話をしているところで、ついに雄ライオンが姿を見せる。ライオンは家族で動いているから、雌を見たなら高い確率で雄を見ることができるとはいうものの、実際出会わなければそんな説など当てにはできないなんて思っていたところで、ようやくに。

ちょうど昼寝に入るところのようで、あくびをしてのびあがった雄ライオンも、あっという間に草の合間に横たわる。車を横付けしその様子を見ると、そこには7,8頭のライオン一家が昼寝中で、草地に入るとその姿が一切見えなくなる様に、サバンナでの動物達の生き方を垣間見る。

まったく動く様子のないライオンにその場を後にし、しばらくドライブした後、マラ川のほとりに車を止め、外に出ようとガイドの声。車から下りても大丈夫?と不安になりつつも、促されるままに外に出る。水遊びをしている鳥に、遠くに見えるカバの群れとそこから見える動物よりも、大地をくりぬいて流れる川の姿が印象的。そして、そんなの川に横たわる流木に見間違えていたのがワニだったことには、ちょっとした驚きで盛り上がり。

その後は、角を突き合わせて喧嘩をしているガゼルを見たりと野生動物の生活を垣間見ながらロッジに向けて車を走らせ、2時間が過ぎた10時30分に無事帰還。俯瞰の景色を楽しみ、サバンナの大地を歩きと何にも変え難いバルーンならではの貴重な体験に、このオプションに参加できたことを素直に喜ぶ。一緒にリスクを乗り越え、感動を分かち合ったバルーン同乗者に勝手な仲間意識を感じつつ、ムパタでの生活へと戻る。


ライオン三部作。盛り上がった土に前足をかけ、高い視線で獲物を探す雌ライオン。大きなあくびをする、ようやく出会った雄ライオン。ライオンだまり。約8頭のライオンが昼寝中。草叢に横たわると、全くその存在が分からなくなる。




左:トピ。群れで行動する特徴があり、この時も、周りに十数頭群れをなしていた。
中:岸に上がっているワニをようやく見つける。写真じゃちっとも分からないから、場所は示さずに。車を降りて、ひと休憩。
右:角を突き合わせて喧嘩するガゼル。ガツガツと大きな音が響き渡る。






ムパタ・ロッジ満喫


早朝発のバルーンサファリを終え、ロッジに戻ってきてからは、併設の売店をぶらぶら見学。いろいろ土産物屋を見てきたけど、この店は、質が良く、値段も手頃だから、結局ここで多くのお土産を購入。トイレ休憩所を兼ねた道端の店は、種類は多いが、なにせ値段交渉が大変。それはそれでおもしろみもあるが、初めからこちらが思う値段以下の値札が付いているなら、これほど楽なことはない。かつ、物も納得するレベルなら、迷うことなくと。

木彫キリン、シマウマとキリンの木彫キャップ付きボールペンをそれぞれ2本づつと、必要数を数えながら、選ぶ。そして、悩みに悩んだ末決断した最も大きな買物は、アフリカ太鼓。高さ60cm×直径35cmの大物で、聞けばここ2年間ほど売れずに残っているという。木彫の胴と、牛の張り皮から鳴り響く音が心地よく、これぞアフリカの魂とすっかり気に入り。思えば、ニューヨーク・ソーホーでの絵画、トルコでの絨毯に続くご当地物で、旅を振り返れる思い出の一品をという思いが、決断を促す。値段は、16000ケニアシリング(約2万円)と悩むに値する値段だったけど。

買物後は、部屋でしばし昼寝。朝4時の起床に加え、体調も万全じゃないため、少し体を休めることに。休憩後は、13時30分から、レストランに行き昼食。胃腸の調子も回復傾向となったことで、ラムチョップをメインとしたランチコースを楽しむ。

      
左:アフリカ太鼓。これを持って帰る苦労話は、また後で。
中・右:ランチのラムチョップ。毎度手の込んだ料理がおいしく、楽しみな食事時を過ごせる。



14時に部屋に戻ってからは、ゆっくりとロッジ暮らしを満喫。ベランダの椅子に座り本を読んだり、前の庭を歩いたり。そして、いろいろ悩んだところではあるけど、15時開始の午後のサファリに参加しないことを決意。午後のサファリは、30度を越える暑さの中、3時間30分の長時間に渡り、体調に自信がない状態では無理をしたくないとの思いから。

そして、一方決めたことは、15時から行われる旅行で出会ったカップルの結婚式に参加すること。この方達とは、ナイロビからマサイマラの空路で一緒になり、ムパタ・サファリ・クラブでは、朝夕のサファリを同じ車で参加、今朝のオプションのバルーンサファリでも一緒になるなど、マサイマラ滞在中すっかり仲良くなって。

日本での披露宴にお金をかけるよりと、新婚旅行にアフリカ・ケニアを選び、ナクル湖を回ってマサイマラに来たそう。そして、伊集院静がムパタ・サファリ・クラブでケニア式の結婚式を挙げたことを知り、それならこの機会にと同じくムパタで結婚式をすることを決めたという。日本で結婚式をすることを考えれば値段も安く、印象深い思い出になるという考えに、なるほどと思いつつ。

午後のサファリに参加しないならぜひ同席をとは、不参加を告げた際にムパタのスタッフに勧められたことだけど、その前によかったらと声をかけてもらっていたから、空いた午後の時間に喜んで参加することに。


左:ジャグジー付が、スイートルームの魅力。温かいお湯に浸かりながら、自然を眺める贅沢を。
中:ベランダの椅子に座りながら、読書タイム。
右:体調も順調に回復。暑さしのぎのために購入したムパタの帽子と共に。





ムパタから見下ろせる、マサイマラ全景。遮るものは何もなく、ただ、空に浮かぶ雲が、影となって地上に多様な絵を描く。






結婚式出席


15時にロビーに集合と聞いて向かうも、既に皆の姿は見えず。これはまずいと、手が空いてそうなスタッフに案内を依頼。ロッジから小道を通り、少し離れた広場に人だかりを見つけ、スタッフにチップとお礼を述べた後、始まっていた式に参加。

結婚式用の民族衣装に着替えた二人を中心に、媒酌人役のマサイ村長夫妻が両脇を固め、その前で民族衣装を着た村の若者がマサイダンスを披露する。マサイジャンプの高さに感心しながら、ここからは写真撮影係に徹する。そういえば、彼らには、その様子を撮る人がいない。式を見られない日本の家族に、彼らの思い出にと、いつでもその時に帰れる写真の良さを10ヶ月前に味わった者として、余計な気を回してカメラマンを買って出て。

人前式形式で、参加者が証人。結婚証明書に二人がサインし、指輪交換。皆が祝福している中、最後に再びマサイダンスで幸せを喜ぶ。降り注ぐ太陽の下、青い空と緑の草原に囲まれた自然の中で、参加者総勢20数名のなかなか盛り上がった式で、そんな幸せな一場面に立ち合わせてもらったことを、素直に喜んで。


左・中:指輪交換。そして、マサイジャンプによる祝福のダンスが始まる。
右:最後は、出席者皆で記念撮影。



新郎新婦を皆でアーチを作り送った後、再び小道を歩いてムパタに戻る。ムパタでは、この後屋外にあるバブーンバーに行き、シャンパンで乾杯。ここでもマサイダンスで祝福が行われた後、新郎新婦に、村長夫妻からマサイ語の名前をプレゼントされ、その名が入ったビーズ細工のブレスレットを腕につけてもらう。ここからは、村長夫妻に質問タイム。しばらくしていったん式後のセレモニーが終了し、その後は自分達も新郎新婦、村長夫妻を囲んだ話の輪に加わったから、村長とのやりとりはまとめて記載。通訳のムパタスタッフの解説が含まれることを、一応補足。

まずは、基礎知識として、村長とムパタの関係から。
村長は、ムパタ一帯の土地の地主で、そもそもムパタは村長に土地を借りてロッジを経営しているという、深い関係にある。それだけに生活に余裕がありそうで、マサイ村訪問等は受け入れず、近くの村に一家で住んでいるそう。

Q 普段の生活は?
A 朝5時に起きて、日が暮れたら寝るという生活。昔は、丘の下のマラ川まで水を汲みに行く習慣があったが、今はムパタがマラ川からポンプで汲み上げ浄化する水を無料で配っているから、その必要がなくなった。

Q マサイ族は一夫多妻制?
A マサイ族は、牛の数が経済力。奥さんの実家にあげる牛がいれば、奥さんを増やすことができる。

Q マサイ族の食事は?
A マサイは、天から牛と土地を与えられた。農耕をするのは、牛を与えられなかった人達だから、自分達より下に見ている。だから、農耕でできた野菜は食べない。牛からできる、牛乳やヨーグルト、牛肉のみを食べる。食事の量は、9人の男性がいて、1〜2週間で牛を1頭。また、部族によりヤギの乳も飲むところもある。

Q マサイ族の服装の意味は?
A 長髪は、戦士の証。女性は、耳飾を付けるため、小さな頃から耳に穴をあけ、徐々に大きくしていく。ただ、今は学校に通うと不衛生でよくないと教えられるので、学校に行った子の耳には穴はあいていない。

Q 血液型は?
A O型がほとんど。

Q 家族の生活は?
A 男は、いざという時に家族を守るため、戦いに備えている。家事、牛の乳搾り、家造り等全て女性の仕事。夫が出かけるのに、場所や時間も聞くことができないほど、男女の差がはっきりしている。


会話を楽しみ、17時前に全てのイベントが終了。再び部屋に帰り、ジャグジーを楽しんだり、ゆったりとムパタの生活を満喫する。ムパタはすばらしい施設を備えているけど、朝夕のサファリに参加していると、なかなかそのゆっくりと時間の流れるアフリカタイムを楽しめない。宿泊料金にはサファリ代込みで、貧乏性からサファリを外す決断は難しいが、一度は思い切って午後サファリをパスしてみてはと提案したい。きっと、それまでとは違う、マサイマラの一面を見ることができるだろう。


左:バーに行き、シャンパンで乾杯。マサイの祝福ダンスで盛り上がった後、名前の贈呈式が行われる。
中:マサイの若者が退場した後は、新郎新婦、村長夫妻の輪に、式の参加者が加わり、質問タイムへ。
右:広場に現れたトカゲは、真っ青なきれいな色で、思わず追いかけて写真を撮る。興奮すると、赤色に変わるんだとか。






披露宴?参加


19時30分に夕食を食べにレストランに行くと、ここでもう一つのイベントが。午後が結婚式であるなら、夕食はまさに披露宴。新郎新婦がマサイ衣装を着てステージ前のテーブルで食事中。二人からといただいたシャンパンで乾杯し、こちらも夜のコース料理をスタートする。

食事後しばらくしてウエディングケーキが用意され、ケーキカット、そしてファーストバイトが行われた頃からお祝いムードでレストランに一体感が生まれる。宿泊者皆がゲストの披露宴では、そのイベントを皆が温かく見守り、大きな拍手を送る。こちらは、式に出席した強みで、親しみを持って宴を祝う。

ケーキカット後は、ステージでマサイ族による祝いのダンスが始まる。いつの間にか、新郎新婦もステージにあがり、一緒に踊り始め・・・、なんていっているうちに、うちの奥さんも気の利いたスタッフに声をかけられステージで踊り始めてしまい。旦那さんもなんて誘いは、それはちょっととやんわりお断り。人前で元気よく踊るのはという本音は隠しつつ、カメラ係としての仕事があるからとの建前で乗り切って。

マサイジャンプでダンスが終わり、最後は、新郎が皆にお礼の言葉。自分を含め周りの宿泊者は、通常の食事の予定が、シャンパン&ケーキのデザート付き、マサイダンス見学という思わぬイベントを体験でき、こちらがお礼をいいたいところなのにと、恐縮する姿に思ったもので。

食事から2時間超経過、21時45分に、二人にお祝いの言葉をかけて、部屋に戻る。いやー、こちらまで幸せになれる心地いい時間が過ごせた一日だった。せっかくなら、二人にも楽しんでほしいと、及ばずながら場を盛り上げようと頑張っていた効果はあったかなと、振り返り。


左:テーブルごとに、暖房代わりの炭火が用意されている。10度を下回る外気も、これで心身ともに温かに。
中:料理人を始めスタッフ皆が、もちろん、周りには、数十人の宿泊客も料理を食べながら、ケーキカットを見守る。
右:ケーキカット後は、ステージで皆でダンス。この後、マサイの民族音楽の演奏があり、マサイダンスへと移っていく。



      
夕食もあわせて紹介。スープ、サラダにキッシュが続き、メインのロースとビーフ。毎晩の贅沢な料理も、これで最後。



明日は、いよいよケニア最後の日。食事から帰るのが遅かったため、いつの間にか完全消灯の23時を過ぎ、懐中電灯を活用して、明日の準備をしながら夜を過ごす。