T 家造りの方向性


はじめに

自らの決断を否定する人はおらず、その必要もない。
決めた瞬間から、それが正解であり、その決断を否定するあらゆる意見は、耳障りな雑音でしかない。
ただ、それが決断する前であるなら、人は、より多くの意見に耳を傾け、正しい判断をするためにあらゆる手段を模索する。

人は決断した後に、よくこの言葉を口にする。「自分の決断に後悔はしていない」。
その言葉は、本当に正しい判断をしたことに対する自信を背景にした言葉なのか。単に、後悔するに至るまで考え尽くしていないだけではないのか。むしろ、決断した後に、自らを否定しかねない客観的な検証や他との比較をやめる、思考停止を宣言した言葉ではないのか。

何が言いたいか。

人が決断した後に口にする言葉ほど、あてにならないものはない。総論的な結論ではなく、その決断に至った背景、判断した理由こそが、自ら判断する際に参考になる情報で、人から助言を受ける上で聞くべきことだろう。

どのような背景で、どういう考えを持って、その結論に至ったのか。
後悔しない方法とは、あらゆる状況を想定し、考え抜いて結論を出すことが、唯一。そのために、いつものように、手を抜かず、最後まで全力を尽くす。

長丁場の住宅建築までの道のり。
同じ工務店で建てた、もしくはこれから家造りを検討するという人以外に、ここでの言葉は素直に耳に入らないだろうと思いつつ、いつものように、心に問いかけながらその経緯をたどる。






1 序章


何のために建てるのか、それだけでも随分と違う。
それでも人は、自ら正しい判断をしたいと願い、より正しいらしい情報を求めて、他人の評価を聞こうとする。

多数の人間の評価が、結局、それを理解できない個性のあるものを排除し、平均的な普通に集約されていくことを知っていれば、大きな影響力を持つに至った背景の見えない他人の評価の集合体である口コミサイトに信頼性がないことは言うに及ばない。

それならば、どこから信頼できる情報を得るのか。

それは、背景の見える個人からであり、その背景、価値観を自分に照らし、すんなりと受け入れられるならば、それを自分の判断材料へと取り入れる。

住宅の購入。人それぞれ、その状況、目的、感性が異なる中で、一生に一度の決断となるものだからこそ、信頼できる情報、そして何より、労を惜しまずに得る直接触れる感覚を第一に、しっかりと判断する。

信頼できる情報の一つとなり、その判断の一助となるべく立ち上げるのが、この家造り記である。






2 背景と方向性


「必ず自分の家を持つ」という強い思いもなく、山口のような地方都市では賃貸アパートの生涯支払額もたかが知れたもので、税金嵩上げが生じる住宅購入の方がお得と言える環境にもない。環境変化の激しい現代において、人生を柔軟に楽しむなら、モノを持たない生き方には共感するところがあり、そのモノと同義語と捉える住宅ローンという長期借入金を背負うリスクは、何よりも重い。

なぜ、家を建てる決断に至ったか。一つには、子供が生まれたこと。鉄筋コンクリート造り、2LDK、延床64uに、駐車場2台込で6万円超の現アパートは、市内でも掘り出し物の物件。3人暮らしには十分なサイズともいえるが、2歳児の子供に広い地面を走り回らせたい、また、中途半端な時期の引越しなら、学校に上がる前に地域に根付いておきたいという思い、そして、ますます仕事中心の生活が見えてくる中、その代償として、皆で安らげ、成長できる、最高の家を家族に贈りたいという思いから。

居心地の良さ、住み良さ、くつろぎの空間、使い勝手の良さ、居住空間としての本質的な質の高さというコンセプトを掲げ、自分が満足できる、その費用に見合う価値があるならば、家を建てる。これが原点だから、おのずと選択肢は絞られる。

まず、1千万円台のローコスト住宅という風潮に興味がない。本物にはにじみ出てくる品と質の高さがあり、偽物には覆い隠せない軽薄さがつきまとうことは、どの分野にも共通すること。1千万円を超える一度きりの支出なら、中途半端にけちらず、選び得る中でのベストを選択したいと思う。もちろん、限られた予算がある中での選択であり、見栄や贅沢に振り分けることなく、コンセプトに直結する本質的な質の高さを追求しようとするだけのこと。

〇予算は、総額3千万円を基準に置く。ここでの総額とは、建物、造作家具、設備機器、配線、照明・カーテン、外構、諸経費、消費税等の住宅関係すべての負担額。住宅ローン次第でもあるため、予算枠にとらわれず、柔軟性を持たせて臨機応変に判断。なお、この予算だと、住宅本体価格は2,200万円程度(税抜)が目安となる。

〇建物規模は、延床38坪に設定。これは、それまで足を運んだ現場見学会で、ゆったりした印象を受けた家の下限サイズであるとともに、求める家の品質と坪単価を踏まえたときのサイズから算出。
※結果、目安の坪単価は58万円弱。

まずはここまで記せば、どのような家造りを目指し、それが参考になるかどうかが見えてくるのでは。


(参考:家造りを進める上で参考にした、雑誌等で見つけた言葉)
〇プランニング
・家造りで何よりも大切なのは、「本来の目的」をはっきりさせること
・どうして家を建てるのか、この家は誰のためのものなのか。夫婦二人のため、子育てのため、いずれ親を受け入れるため。目的を明確にして、プランを考える。
・「誰が何と言おうと、私はこうしたい」が、プランのすべての基礎
・住まいのプランニングとは、夢をかなえるため、欲を削ぎ落していく作業。「一番欲しいものだけ手に入れられればいい」と考え、あきらめる部分は、いさぎよくあきらめる。

〇コストダウンは、無駄を省き、必要以上の贅沢をしないこと
・嫌いなもの、好みに合わないと分かっているものは、事情がどうあれ採用しない
・「あったらいいな」とか「いずれは必要になるかもしれない」という程度の要望は、思い切って実現する目標から外す
・「必要のない贅沢」と思えるものは、あきらめる
・無駄を省き、必要以上の贅沢を避け、今すぐでなくてもいいものはその準備だけをしておくといったことを徹底する

・センスが共有できる人・依頼先を探す
・耐久性・安全性・健康に関するものは、コストダウンの対象にしない




                                                                         






家造り記
2014年12月完成 安成工務店
足掛け6年、住宅会社と、そして土地と出会い、思いを形へ
居心地・使い勝手の良い、居住空間としての本質を追求した間取りに、安成工務店のセンスと技術が息吹を吹き込む
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