Ⅳ 住宅会社
5 住宅会社検討
住宅を検討してきた期間は長く、広島居住時代の6年前に遡る。
当初は、将来も見据えつつとは言え、暇つぶしの領域を出ない。将来は山口に建てると話せば相手にされないことをいいことに、広島市内の住宅展示場を自由に見て回る。住友林業、三井ホーム、パナホーム、積水ハウス、スウェーデンハウス等々大手ハウスメーカーが中心で、当時は、無垢床にひかれた住友林業がお気に入り。
山口に帰ってからは、山口市内の住宅展示場・サエラへ。
モデルハウスを見学する中で、いくら着飾ってもにじみ出てくる、無機質な、事務所のような雰囲気が肌に合わず、鉄鋼系住宅を選択肢から外し、木造住宅を中心に検討。木造住宅のシャーウッドをラインナップに揃える積水ハウスには、市内にある夢工場まで見学に行ったりと。
住宅を建てる気持ちも定まらず、情報だけを集めている中、友人からの一言が、新たな選択肢を与えてくれる。
当時、東京の木造住宅を売りにする工務店で働いていた友人と、出張ついでに飲む中で家造りへと話は広がり、「山口県には「安成工務店」があるじゃないか」との言葉が出る。木造住宅に思いを持つ友人が、一地方の工務店の存在を知っているばかりか、特別な響きで評価することに驚きを感じ、それなら一度足を運んでみようとの思いに至る。
それまで、何気に通り過ぎていた住宅展示場・サエラの一角に位置する安成工務店のモデルハウスを訪れたのは、それからひと月もたたないうちのこと。同じ木造住宅と言いながら、それまで見てきた大手ハウスメーカーと大きく違う、無垢の床、柱、天井と木を前面に押し出した造りに、体になじむあたたかさ、なんとも言えない居心地の良さを感じ、家に求めるものをここではっきりと認識する。
ここから安成工務店を中心に、モデルハウス、そして現地見学会に行った回数は、足掛け4年、30回を下らない。工務店系の木造住宅という新たな選択肢のもと、銘建、原工務店、成匠、トピア、水建等々評判を聞く工務店、オノミチエさんといった設計士まで選択肢を広げ、見学会で直接雰囲気を感じるとともに、直接話を聞き、それぞれの特徴を詳しく聞き出す。
この時点で、大手ハウスメーカーは選択肢から外れたから、今後、話を出すことはない。積水ハウスなど、西日本の製造拠点を山口に置き、地元の雇用にも大きく貢献するなど、企業としては無条件に応援したくなるのだが、自ら出費を伴うとなれば、話は別。大手ハウスメーカー全般に言えることだが、その費用に見合う価値を感じる家に出会うことがなかった。数値的な、技術開発的な優位性があったとしても、それが、居住空間で実感できないなら、そこに価値は見出せない。
大手ブランドの安心感、保証の確かさ、サービス水準の高さと、いろいろ良さはあるのだろうけど、それは自ら情報を集め判断すれば足りることだし、そのブランドを維持するために必要な利潤に貢献する余裕もないから、本質的なものの良さを第一に判断する。つまりは、世間からは評価される平均的で、経済合理性を追求した画一的なものではなく、本物が持つ質の高さと、個性のあるおもしろさを感じさせるものを選択したということで。
一方、地域に根差す工務店を敢えて選んだわけでもない。例えば、広告宣伝費や営業マンといった間接費を削減し、職人だけで建てることを売りにする工務店もあるが、それぞれに役割がある中、建築面だけのプロに委ねることは、多方面で意見を交わしたい自分の家造りとすぐわないから、興味がない。
また、工務店の木造住宅となると、ただ木を見せればいいという、無骨な家を目にすることが多いが、求めるは、木造りのあたたかさを感じさせながら、洗練された雰囲気を持つ家で、直接見学会を訪ね、自分の感性に問いかけながら、絞り込みを行った。
ちなみに、エコを売りにする工務店も多いが、住宅に限らず、費用負担により得られるエコに、全く興味がない。エコの取組が、結果的に高い品質に、ランニングコストの低減につながるなら、率先して取り入れるという明確な基準により判断。
検討の結果、求める家を実現できそうな、その価値に見合うと判断したのが、次の3社。
①安成工務店
・本社は、山口県下関市。施工エリアは、福岡県、山口県全域。年間建築棟数、100棟以上。
・在来工法をベースにした、自然素材の家造りが特徴。規格はなく、完全な自由設計。長期優良住宅に標準適合。
・床は無垢唐松(信州産)、内壁は珪藻土、断熱材はセルロースファイバー(古新聞再利用)、屋根はガルバリウム鋼板、構造材は杉(大分県産)が中心。
・太陽熱床暖房システム(冬場は集熱した太陽熱を床下に送り込み室内循環、夏場は集熱を給湯に利用)であるOMソーラーを推奨。
②銘建
・本社は、山口県防府市。施工エリアは、山口県(防府市、山口市、周南市、宇部市、光市、下松市、山陽小野田市)
・在来工法による、「山口の気候風土に適したデザイン性の高い家造り」がモットー。規格住宅から自由設計まで対応可。長期優良住宅にも対応可。
・床は無垢杉、内壁は漆喰、断熱材はグラスファイバーやアクアフォーム(発泡ウレタン)等、屋根は瓦を推奨、構造材は山口県産の杉・桧。
・エアパス工法(壁体内通気による冷暖房補助システム)を推奨。
③原工務店
・本社は、山口県防府市。
・在来工法による、自然の快適さを取り入れた家造り。長期優良住宅にも対応可。
・床は無垢杉、内壁は無添加漆喰、構造材は国産集成材。
・OMソーラーの進化版「そよ風」による太陽熱床暖房システムを推奨。
いずれも、地元工務店として評価は高く、信頼して工事を任せることができる。無垢床や塗り壁等自然素材を使う安らぎの空間づくりに共通点があり、一定レベル以上の木造住宅を求める人が、この3社を中心に検討することが多いことにも納得する。
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家造り記
2014年12月完成 安成工務店
足掛け6年、住宅会社と、そして土地と出会い、思いを形へ
居心地・使い勝手の良い、居住空間としての本質を追求した間取りに、安成工務店のセンスと技術が息吹を吹き込む