Ⅸ 番外編(①エコビルドツアー)


エコビルドツアー


「エコビルドツアー」とは、毎月1回開催される、安成工務店の工場見学会。下関市菊川町の豊東工業団地内にある関連会社・㈱エコビルドの施設を利用し、プレカット施設、断熱材工場、構造館などを見学する。ちなみに、同産業団地には、山口県の誇る中小企業・ひびき精機や、県内乳製品のトップブランド・やまぐち県酪乳業の本社工場と、県内でも有数の企業が立地している。

このツアーに参加したのは、既に契約を済ませた9月に入ってのこと。工場見学会の存在は知っていたが、契約前は、安成オリジナルの断熱材・セルロースファイバーをはじめ十分情報収集しており、あらためて直接確認するといった、契約を判断する上での必要性を感じず。そんな中、いざ安成工務店で建てるとなると、これから建つ自分の家が、どのような木で、どのように加工されてできあがるのか、自分の目で見ておきたいという興味がでてき。

会社説明と工場見学を合わせた約2時間30分の行程で、家を建てる段階になくても、職人の加工作業や断熱材の性能を直接体験することができ、工場見学そのものが楽しめる。そんな内容を簡単に紹介。


①会社概要説明
・昭和26年に豊北町で建設請負業として創業し、現在の2代目社長が工務店として事業拡大、グループ売上高150億円、従業員数100名超に至る。
・住宅部門は、山口県に4支店(下関・山口・宇部・周南)、福岡県に2支店(北九州・福岡)の計6支店から成り、各支店10名体制が基本。支店単位で、工事、設計、営業が完結する体制を組み、それぞれが独立して地域工務店の役割を担う。現在は、一支店が年間17棟、全社で年間100棟の住宅を建設。年間17棟は、地域工務店として認知される一つの基準。質を維持するため量は求めず、各支店が月に2棟引渡す、年間24棟体制を目指し取組中。
・グループ会社は、リフォーム事業を分社化した㈱ハウスドクター山口、総合建設業の㈱オークス、木質繊維系断熱材・セルロースファイバーを全国に年間3千棟分供給する㈱デコス、安成工務店向けプレカット木材供給の㈱エコビルド等。




②プレカット工場見学(㈱エコビルド)
・大分県から輸送した輪掛けの杉と県内の桧を、含水率が一定水準に落ちるまで保管し、加工。
・通常のプレカット工場と大きく違うのは、全自動コンピューター制御ではなく、熟練した職人による半自動加工なこと。
・木材が使われる場所やそれぞれの木の性質に合わせ加工方法を変えたり、見せる柱や梁に表面加工を施す。材料により使う部位・場所を選別する適材適所で対応。
・職人の手作業が入るため製造量が限られ、月間8棟分の木材加工を実施。

  
左:大分県から運ばれてきた木材は、ここで含水率が落ちるまで3ヶ月程度保管される。
中・右:梁等に使われる太い木材から、構造材となる桧まで、大量の木材が並ぶ。



  
左:プレカット工場内の様子。加工段階ごとに木材が並び、墨付けの形状に沿って、職人が機械を使って加工していく。
中:表面化粧加工の様子。見せる柱は機械によるカンナがけで、表面を薄く削り取っていく。
右:建物ごとに加工された木材が積み重ねられ、一エリアが一棟分の量となる。名札には施主名と上棟式の日程が記載。我が家の木材も、一月前にはここに積み重ねられていたのかと感慨深く眺める。




③断熱材工場見学(㈱デコス)
・木質繊維系断熱材・セルロースファイバーの製造工場。材料は100%新聞紙で、菊川町内自治会等を通じて古紙を回収。インク等の安全性を重視し、雑誌等は使用しない方針。
・防水、難燃性を確保するため、ホウ酸を添加。副次的に、ゴキブリ、シロアリを寄せ付けない防虫効果がある。
・調湿効果があるため、断熱材では唯一透湿フィルムを設置不要のJIS認証を取得。
・調湿効果、吸音効果に優れ、工場内に設置されたセルロースファイバー施工の倉庫型体験室では、蒸し暑さを感じさせないひんやりした空気と、製造機械の騒音が遮断される防音空間を体感する。

  
右:セルロースファイバー製造工場。ベルトコンベアで新聞を取り込み、破砕工程を経て、粉末状の完成品がビニールパックに入れられヤードに並ぶ。
中:資格を持つ専門職人によるセルロースファイバーの吹込み作業の実演。隙間なく、かつ重量による沈降を発生させない吹込みを、難なく短時間で仕上げる様子に、施工への信頼を確かなものにする。
右:千度超のガスバーナーによる難燃性の実験。ホウ酸添加による難燃性に加え、密度が高いため中まで燃えない特徴を持つ。焦げた表面の奥はまったく燃焼しておらず、一時的な熱だけではなく、一定時間以上の熱にも強いことを確認。




④構造館見学
・津江杉の構造材や安成工務店の施工を見ることができる構造館。
・基礎、断熱材、珪藻土の塗壁、外壁、屋根等各所に透明プラスチックで構造が見える仕組みを導入。一組ごとに付く営業マンに質問しながら、構造館内を見学する。
・ここでは、ツアーの最後に簡単なクイズと参加者プレゼントの贈呈、参加者による感想を言う機会がある。プレゼントは、木製の子供用椅子やすのこ等すぐに使えそうなものばかりだが、ここでもらえるのは材料となる木材のみ。帰宅後に、釘とカナヅチで自作してくださいという落ちがつく。

      
左:壁面へのセルロースファイバー充填の様子。コンセントや電気スイッチのみ避け、隙間なく埋められることこそ、セルロースファイバー断熱材の魅力。
中:外壁の構造。セルロースファイバー → 耐力壁面材(ダイライトMS) → 透湿防水シート(外側) → 通気胴縁 → 外壁サイディング材 → 塗壁(ジュラクペンアート)
右:屋根の構造。セルロースファイバー → デコスシート → 空気層 → 構造用合板 → 防水シート → 通気胴縁 → ガルバリウム鋼板(段葺き) → OM集熱ガラス



⑤感想
山口県産材利用の補助金50万円は、積み上がった見積額の最終調整段階においては、のどから手が出る程ほしくなる現実的な金額。安成工務店でも、県産材利用を依頼すれば、もちろんそれに対応してもらえる。ただ、その選択をすれば、木材のプレカットは全自動工場への外部委託に自動的に振り分けられる。その理由は、プレカット工場の製造能力が限られ、安成が取組む輪掛け杉の循環利用を優先するため。
高温乾燥ではなく、輪掛け乾燥と中・低温感想を組み合わせた木材自体の質の高さ、職人が使う場所と部位を選び加工するエコビルドの構造材は、強度だけでなく、見た目にも大きな優位性を持つ。大壁工法ながら、一部に木材を見せる設計だからこそ、木の質も重視しようとエコビルド木材の利用を決断。その判断に確信を持つべく訪れたのが、今回のエコビルドツアーでもあった。

目の前で、木と会話をしながら丁寧に加工していく職人の姿に、この人達になら安心して我が家の構造材を任せられると素直に思う。セルロースファイバーを直接手で触り、どういう素材かを確認できた安心感等々、参加してみれば、いろいろ学べることもあり意義を感じた。一番の印象は、最後の質疑応答に丁寧に対応する専務をはじめ、皆、まじめに、一生懸命より良い家造りに取り組んでいるという姿勢を感じられたこと。環境や構造など、どれか一つにこだわるのではなく、それぞれに追求しながら、設計・デザインも含めた総合力で押していきたいという姿勢は、まさに自分が感じる安成工務店の魅力であり、住宅会社に求めること。そして、その方向性を住宅事業トップが示し、一丸となり取り組んでいることに好感を持つ。

ひいき目なしに、本当にいい家を造っていると思う。まあ、結果的にそれが価格に跳ね返るのが悩ましいところで、今回の他の参加者の感想に、数か月前の自分の中での葛藤を思い出したりと、いろいろな面で楽しめたツアーだったなと振り返る。




                                                                         






家造り記
2014年12月完成 安成工務店
Ⅰ 方向性 Ⅱ スケジュール Ⅲ 土地 Ⅳ 住宅会社 Ⅴ コンセプト
Ⅵ 住宅会社決定 Ⅶ 住宅工事 Ⅷ 完成見学会 Ⅸ 番外編 Ⅹ コメント
足掛け6年、住宅会社と、そして土地と出会い、思いを形へ
居心地・使い勝手の良い、居住空間としての本質を追求した間取りに、安成工務店のセンスと技術が息吹を吹き込む
①エコビルドツアー ②サエラモデルハウス ③表札