Ⅵ 住宅会社決定②(安成工務店の魅力)


8 安成工務店の魅力


(1)材料
○構造材
・一部の構造材に、大分県日田市上津江町の輪掛け乾燥材を使用。輪掛け乾燥材とは、伐採した杉材(樹齢60年以上)を皮付きのまま山中の風通しがよく、日当たりのいい場所で、井形に組み1年間じっくりと天然乾燥させる乾燥方法で、機械的な高温乾燥と比べ、調湿性能が高く、収縮や変形が最小限に抑えられ、色や香りが優れるという特徴をある。
・県産材使用による50万円の補助金は大いに魅力的だが、輪掛け乾燥する質が高い中津江杉材、安成自社工場での職人によるプレカットはその差を納得させる価値がある。
・安成は、大壁工法でも、構造の柱を何本か見せる造りをすることに特徴があり、完成見学会場で見る、そこにたたずむ上品な杉柱に、何度感じ入ったことかと。


大分県中津江の木材生産業・トライウッドでの輪掛け乾燥の景色

○床材
・信州産の無垢唐松(15㎜)。この床材に惚れて、安成工務店を選んだといっても過言ではない。どこか軽さを感じる杉や硬さ・冷たさを感じる桧に比べ、温かみと上品な質を感じる見た目、そして柔らかで足触りが良く、サエラ・モデルハウスではいつも裸足でその感触を楽しんでいた。
・なお、唐松は、温水式床暖房との相性はあまりよくないと聞くので、選ぶ際にはプロの意見をよく聞いた方がいいだろう。
・ちなみに、今回契約後の打ち合わせで、増税前駆け込み需要により信州産無垢唐松の入手が困難となり、杉材等への材料変更を提案されたが、即却下。本気で不可なら、産地の違う国産唐松の入手ルートを紹介しようと思うも、すぐに発注することで対応できたようだから、事なきを得る。

○屋根材
・ガルバリウム鋼板(0.4㎜)が標準仕様。外観のスタイリッシュな雰囲気によく合い、完成見学会で全体のフォルムを見たなら、迷うことなく選択したくなる。瓦と比べ軽量のため、構造への負担も軽減。メンテナンス費用(10~15年に一度の塗り替え)や耐久性から瓦の良さも理解しつつ、やはりそれぞれの家に合う外観スタイルも大事にしたいと思うところ。

〇外壁
・サイディングの上に、ジュラクペンアート(フジワラ化学)の塗り壁を施す。一般的に知名度のあるジョリパッドと同等のもので、汚れへの強さ、なにより見た目の質感がお気に入り。
・サイディングは無機質だし、一時は光触媒にもひかれたがそこまでメンテを意識し過ぎなくてもと却下。濃い色の外観が好きではないため、ベージュ系の白に近い色に。雨垂れ、排気ガスで黒ずんできたなら、しばらく粘って、メンテナンスに勤しむことにしよう。

〇内壁・天井
・珪藻土(自然空間・フジワラ化学)の塗り壁は、室内を柔らかな雰囲気に仕上げ、白系の色が昼は明るさを反射させ、夜は電球色の照明によるオレンジ色のほのぼのとした灯りで部屋全体を包み込む。なお、コストカットから、2階等には一部エコクロス(壁紙)を採用。

〇断熱材
・大きな魅力の一つであるセルロースファイバー(120㎜)。吹込み工法のため、グラスウール等に懸念される隙間ができず、調湿作用で発泡ウレタン素材に懸念される経年劣化による落ち込みもない。
・断熱性能は言うまでもなく、繊維の中に自然に存在する空気胞により防音効果が高いことも魅力。室内から出す音に限らず、道路に近いため外からの音も懸念の一つのため、防音の優位性にひかれて。


古新聞を原料とする木質繊維。シートを張り、内側にセルロースファイバーを隙間なく吹き付ける。




(2)床暖房
安成工務店の家の魅力は、特に冬場に発揮される。雪の降るような寒い日であっても、室内に入ればほんわかとした暖かさに包まれること。エアコンの乾燥暖房が嫌いで、石油ファンヒーターで冬場を乗り切るのが常だが、戸建てではあまりに非効率。銘建では、コスト面と輻射熱効果を期待し、ガス温水式床暖房を選択するつもりだったが、いくら広い範囲をカバーしたとしてもその敷設には限界があるし、無垢床への懸念もある。安成工務店が推奨するOMソーラーは、太陽熱を集熱して空気を暖め、それを床下に送り込み、床から各部屋の排気口を通じ室内に暖まった空気を送り出すことで、家全体を暖めようとする仕組み。寒いから、北側の部屋に行きたくないではなく、どこに行っても同じ暖かさを感じられるから、家全体を有効活用できる。

なお、OMソーラーの魅力は分かりながら採用しなかったのは、①ランニングコスト削減面から、屋根への太陽光発電設備設置を優先、②外気を取り入れる仕組みながらPM2.5対策がなく、暖房機能が必要な1~3月に実質的に利用できない、③20年程度の技術で、屋根に空気を取り入れるための穴をあけることのリスクを慎重に判断、④太陽熱集熱効果は限定的で、結局ガス補助暖房の設置が欠かせない、等の理由から。

結局、太陽熱集熱システムをやめ、ガス補助暖房のみを採用することで、暖かな空気を床下から送り出し循環させ、ほんわかとした暖かさで全館暖房を確立するという一番の目的を実現。冬場も快適に過ごせ、無垢床にも影響を与えない、そして屋根も空けられるというベストな選択をする。


OMソーラーの仕組み。このうち、補助暖房を設置し、(たぶん)⑥以降の機能を採用。




(3)造作家具
見た目もいいが、値段もいい、そんな率直な感想を持つ安成工務店の造作家具。扉等見える箇所にシオジ、内部に杉等の木材を仕様。無垢床、塗り壁とよく合い、見た目・使い勝手の良さから、コストカットと葛藤しながら1階の主要箇所で採用。ただ、大工仕事の造作家具で安上がりという一般常識は通じないから、対象を厳選し、不足分を無印やイケア、ニトリといったところでカバーしていきたい。




(4)設備機器等
・システムキッチン、風呂、洗面台、トイレの標準仕様は、TOTO。他も自由に選べるが、TOTO製にも十分な機能があり、割引の効く値段を考えるとやはり選択の余地はない。ちなみに、風呂は少し大きめの1717サイズ(通常1616)が選べ、トイレの機能(飛散防止等)は他社を大きく上回るから、TOTOをむしろ積極的に選びたく問題ない。悩むならシステムキッチンといったところだが、今回は、TOTOの生産工程に支障が生じ、標準仕様がクリナップ・クリンレディに変更されたことから、喜んでステンレス仕様のキッチンを選ぶ。

・照明は、コイズミのLEDが標準。コイズミ照明は雰囲気が良く、LEDの値段も手頃になっているから、言うことない。一部、玄関の人感照明を、防犯機能の付くパナソニックに変えたり、コストカットのため許された後付可能な照明を施主支給(自分取付)にしたりとわがままも言いつつ。(工事と一体で取り付ける照明は、施主支給不可のため、皮算用をしないように注意)

・カーテンは、タチカワブラインドのプリーツスクリーンが推奨品。タチカワ、ニチベイ、トーソーといったカーテン業界の御三家があることさえ知らなかったが、確かにタチカワはものがいい。プリーツスクリーンはすっきりとした見た目、素材感が大きな魅力だが、通風面に弱みがあるため、昼間、カーテン等がなくても外から視線が入らない等の条件が必要になるので注意。(大きな声では言えないが、予算オーバーにより、近所のカーテン専門店で同製品を大幅値引きで調達。いずれにしろ、採寸・取付しないネット購入は、価格に関わらずやめた方が無難。家は、設計図どおりにできあがらず、完成後のプロによる採寸が必須だから)


プリーツカーテンは、和紙や布等素材感のある種類と様々な色を選べる。レース部分と上下反転させて作ることも可。見た目が良く、視線や光も防げるが、風を通さないことが使い勝手を狭める。




(5)スタイル
・最近の2階建て住宅は、できるだけ高さを抑え、外観を整える傾向にあるらしい。安成工務店も、高さの使い方を強く意識しており、今回設計は、1階が玄関2,100㎜、LDK等2,300㎜、和室2,600㎜と、通常2,400㎜の頭があったからその高さに驚く。リビング吹抜け4畳分と合わせ、高さにメリハリをつけ、通常の居住区間は落ち着く2,300㎜にするのだとか。少々不安もあったが、お気に入りのサエラモデルハウスや、これまで好印象の見学会住宅も同じ規格と知り安心して任せる。ちなみに2階は、ホール2,100㎜、主寝室は勾配天井で2,100~1,800㎜、子供部屋が2,300㎜となる。
・内部の高さを抑えた分、外観もぐっと腰を据えた形となり、その意図を理解する。




(6)設計士
安成工務店の魅力は、建物自体ももちろんだが、その設計・デザインを担当する設計士のセンスが素晴らしいこと。特に、山口支店の三浦設計士は、ずば抜けている。
規格を設けない自由設計の家造りにより、地域や土地の特性に応じ、柔軟な発想で採光や風の流れといった自然の恩恵を最大限引き出すことは、安成工務店の共通仕様。さらに彼の魅力は、実用面での使い勝手に留まらず、外から、そして中からの見え方まで十分に考え尽くし、こちらの気付かない新鮮な視点で、まさにプロの提案を行うこと。余計なものを排除したシンプルな造りを、品のある美しさでまとめあげるセンスに、絶大な信頼を寄せる。

彼が設計した山口市・サエラのモデルハウスはその典型で、外構を含め、各場所からの視界も意識する計算し尽くした設計に感心する。サイズは別にして、標準仕様をベースにした設計でみせるモデルハウスだから、具体的なイメージを持ちやすく、その魅力を思い出すべく何度も足を運んだ。 ちなみに、最後に安成に決断する前にも、価格面で銘建と悩む中あらためて訪ね、価格に見合う価値を再認識し、安成にしようと腹を固めたりしている。

なお、安成工務店は支店によりその色が大きく異なる。北九州・福岡支店、周南支店は、木を全面に見せる真壁工法による無骨な造りをメインに打ち出し、宇部支店、山口支店は、大壁工法によるスタイリッシュな雰囲気が中心。これは地域ごとの顧客ニーズを反映した結果らしいが、安成工務店を象徴する山口市・サエラのモデルハウスを一度見学することをおすすめする。

ちなみに、三浦設計士は、2013年第2回のチルチンびと住宅建築賞最優秀賞を受賞。前年の優秀賞からステップアップしてのもので、審査委員長による評価が、彼のデザインの特徴をよく表す。
「この作品は取り立てて奇抜さがあるわけではなく、また何か難しいことをやっているわけでもない。さらには素材や工法の点でも今や多くの地域工務店のレベルは高くなっているから、その点から言っても何かがあるわけではない。
しかしこの家には上質な普通さが漂う、あるいは品が漂う家とでも言っていいかもしれない。一見普通だが、この上質さはそう簡単に設計できるものではない。各部分の決定はその部分だけで決められるものではなく、他とのさまざまな関係を考慮しながら決められるもので、多元方程式を解くような相当の精神力が必要である。その結果、全体として何の違和感もなくさらりとほどよくまとまり、心地よい質を生み出すことができる。このような設計姿勢は、住宅設計において大事にしなければならない普遍的な課題である。」

※三浦設計士は、平成26年7月に宇部支店へ異動。今後の山口支店エリアの設計は受けないと聞くので、家造りのタイミングの良さに感謝。常に考え尽くしたはずの想像を超える提案をしてくれる彼の存在がなければ、安成工務店を選んだかどうか。サエラ・モデルハウスに惚れたなら、三浦設計士指名でごり押ししてみるのもありだと思うが。




(7)営業スタイル
安成工務店の営業のスマートさには感心する。営業マン特有のがつがつした感じがなく、人当たりは極めてソフト。一度見学会等に行けば、こまめに見学会案内ややすらぎ通信(情報誌)を送ってくれるが、営業マンが訪問したり、電話でさえかけてくることはない。そういえば、ここ半年ほど家の研究から遠ざかっているなといった時にも、見学会に行けばまた温かく迎えてもらえるが、そのためのアプローチというのは行われない。

自分たちの家に信念を持ち、それを正当に評価してもらうことには労力を惜しまないが、それを踏まえた判断は客に委ねるという、そこには不思議な信頼関係が築かれる。その結果得られる適度な距離感が、4年もの年月、気を使うことなく何度も見学会に顔を出せる理由となる。

安成工務店では、いい土地が見つからないからと、4、5年かけて家を建てる人が多いというのもうなづける。ブランドのある大手住宅メーカー、手頃なローコストメーカーと様々な選択肢がひしめく中、安成工務店を検討する人は、それなり共通点がある。いいものへのこだわり、価格だけではなく価値にも重点、そしてその違いを感じられる人。理屈ではなく感覚が認めた評価は、なかなか覆らず、いつまでも心に留まる。いろいろと回り道をしても結局安成に戻り、異なる選択をした人は本当は安成が良かったけどと口から出てしまうのは、そこに理由があるからだろう。

いろいろと悩み、再び戻ってくる人を温かく迎えることこそ安成工務店に求められる営業スタイルで、その考える過程を邪魔し、不要な感情を相手に与えるようなことは決してない。そのスタイルが自分に合うから、気長な付き合いがここまで続けられたとつくづく思う。

※山口支店は営業マンを含め、平成26年7月異動で大きく変わったから、さて、どうなることやら。こちらの要求には的確に対応、基本は構わないという営業スタイルを継続してほしいところ。




                                                                         






家造り記
Ⅰ 方向性 Ⅱ スケジュール Ⅲ 土地 Ⅳ 住宅会社 Ⅴ コンセプト
Ⅵ 住宅会社決定 Ⅶ 住宅工事 Ⅷ 完成見学会 Ⅸ 番外編 Ⅹ コメント
2014年12月完成 安成工務店
足掛け6年、住宅会社と、そして土地と出会い、思いを形へ
居心地・使い勝手の良い、居住空間としての本質を追求した間取りに、安成工務店のセンスと技術が息吹を吹き込む
①決定 ②安成魅力 ③契約内容 ④住宅仕様 ⑤追加設備 ⑥間取図 ⑦住宅設備